「トルコが第二ボスポラス夢の大海峡建設計画」

2010年10月 9日


 最近、トルコの経済と政治は、極めて活況を呈している。エルドアン首相の人気はトルコ国内ばかりでは無く、アラブ諸国の間でも広がっている。その秘密は、彼が歯に衣着せずに、正論を公の場で口にするからだ。

昨年、シナイ半島のシャルム・エルシェイクで開催されたダボス会議では、イスラエルのペレス大統領を、ガザでの虐殺の張本人と罵倒した。アラブ各国の首脳たちは口にしたくても、イスラエルとアメリカが怖くて言えなかった台詞を、エルドアン首相がズバリ言ってくれたのだ。

加えて、今年トルコが送り出したガザへの支援船、フロテッラ号に対するイスラエルコマンドの襲撃により、9人のトルコ人(うち一人はアメリカ国籍のトルコ人)が犠牲になったことから、アラブ人はトルコがアラブのために、血を流してくれたと高く評価している。

以来、エルドアン首相のアラブ世界での人気は、群を抜いている。そのことは、アラブ諸国へのトルコ企業の進出の上でも、湾岸諸国からのトルコへの投資の上でも、好影響を与えている。

このため、世界同時不況にあったトルコは、早々と不況から脱出する方向にある。そうした状況が言わせたのであろう。エルドアン首相はイスタンブールの西約30キロほどであろうか、その地域に人口の海峡を建設すると言い出したのだ。

イスタンブールの西側には、入り組んだ湾と川が南北に流れていることから、以前から人口の海峡を建設したいという考えはあった。1936年にも同じ計画が検討されたが、実現しなかったという経緯がある。

今回はトルコ政府も本気なのであろう。それは、イスタンブールを通過するボスポラス海峡が、あまりにも通過する船の数が多すぎて危険なことに加え、石油の輸送も大量になっていることから、汚染がひどくなってきているからだ。

この汚染と通過する船舶を軽減するために、パイプ・ライン計画も出てきたのではないか。現在ボスポラス海峡を通過する船舶の数は5万隻で、毎日136隻と27隻のタンカーが通過しているのだ。通過する貨物量は1・5億トンそのうち石油が1億トンだということだ。

最初に第二ボスポラス計画が検討された頃の通過船舶の数は、3400隻であったということであるから、いまの状態如何に混雑しているかが分かろう。実際に通過には2日間も待ち合わせが必要になっているということだ。

この第二ボスポラス海峡の建設には、既にロシアの企業とイタリアの企業が名乗り出ている。建設費は100億ドルで完成は2023年が予定されている。建設資金はロシア企業が負担する方針を打ち出している。通過する船から通過料を取れば、十分に採算が合うということであろう。

もし日本がこの計画に参画したいのであれば、中国の安い人件費と日本の高度な建設技術を抱き合わせにして、提案してはいかがなものか。最近、中国とトルコの関係は進展している。両国にとっても悪い話ではあるまい。