「湾岸諸国で広がる麻薬禍」

2010年10月 2日

 ヨルダン・タイムズが先日、湾岸諸国のなかで、麻薬が蔓延している、というニュースを報じた。その記事によれば、ピル状の麻薬が、大量にサウジアラビアで、摘発されたということだった。

それは、想像を絶する量であったことで、ニュースが私の頭から、離れなかったのだ。確か400万錠以上だったと思う。それがサウジアラビアのなかで、さばかれているということは、相当数の常用者がいる、ということではないのか。

多分に、最初は頭痛に特効があるとか、疲労回復にいい、とかといった触れ込みで広がり、ついには、中毒になっているのではないか。何処の国でも、麻薬がはびこる手順は、同じようなものであろう。

問題は、サウジアラビアでは一般人には、アルコールが手に入らない、ということだ。密輸のアルコールは、相当量あるようなのだが、それは高価であり、しかも、宗教的な抵抗感や、社会的な体裁もあり、一般の人たちはなかなか口にしよう、とは思わないのであろう。

しかし、麻薬については、イスラム教でも宗派によっては、精神の統一とか、アッラーに近づく手段として、容認されている場合もある。また、サウジアラビアの隣国であるイエメンでは、カート(ガートとも発音する)が、一般的に用いられている。

カートとは木の若い葉であり、これを大量に口に含み、気長に噛んでいると、次第にリラックスしてくるというものだ。言ってみれば、軽い麻薬性のものなのであろう。こうしたものが許されているということは、麻薬に対する抵抗感が、アルコールに対するよりも相当緩い、ということなのではないか。

ピル状の麻薬のほかには、ハッシッシの流入も、馬鹿にならないのではないか。ハッシッシは中東全域で普及し、何か催事があれば、ハッシッシを供するのが、主催者の力量といった判断が、なされている地域もある。先日、エジプトではハッシシの品不足が、社会問題化している、という話がニュースとして、伝えられていた。

サウジアラビアはイスラム教の教えが、厳しく守られている、と一般的には思われているが、実際はそうでもない。金持ちの多くは、密輸のアルコールを自宅にストックしているし、今回ご紹介したように、麻薬類も大量に、持ち込まれているのだ。

これといった娯楽が認められない、アルコールもだめとなれば、若者は我慢の限界に、達するのかもしれない。その結果が、麻薬に手を出す、ということではないか。しかし、それはサウジアラビアを始めとする、湾岸諸国にとって、将来への可能性を断つことに、繋がる危険な現象であろう。何か若者向けの、新しい対応方策が、必要ではないのか。