トルコが過去30年に渡って、苦しんできた問題の一つは、クルド問題だった。クルド人が結成したPKK(クルド労働党)の分離独立闘争で、トルコ政府の発表では、4万人以上の人たちが、犠牲になったということだ。
この4万人のなかには、クルド人も相当数含まれていたと思われる。無差別テロは民間人を巻き込むことに加え、クルド人だけを除外するということは、物理的に出来なかったからだ。
このクルド問題があるために、ローザンヌ秘密協定の期限が、切れているにもかかわらず、トルコ政府は同国南東部の、地下資源の開発に、手が出せない状態が、続いてきていたのだ。
今回、トルコでは与党AKP(開発公正党)が進める、憲法改正国民投票で、PKKを含むクルド側とトルコ政府との間に、間接的な協力関係が芽生えた。クルド人たちは反対票を投じることなく、棄権という形でAKPを支持し、PKKは停戦を宣言することによって、選挙を妨害しなかった。それは、AKPに対するクルド側の期待があったからであろう。
トルコ政府はシリアとの関係も、大幅に改善してきていた。トルコ政府はシリアとイスラエルとの、和平の仲介役を宣言し、応分の努力をしてきていた。このため、トルコとシリアとの関係は、段階的に改善し、今では信頼関係を、強化している。
そのシリアが、トルコにPKK問題解決の道を、開いたのだ。それは、シリア出身のPKKメンバーを、シリアが受け入れて市民と認め、同様にトルコ側もトルコ出身のPKKメンバーを、受け入れるように提案したのだ。
しかし、シリア側はそもそも、シリア出身のPKKメンバーの先祖は、トルコから移住してきた人たちだというのだ。トルコが共和国宣言をした当時、クルドの独立を考えたクルド人が、弾圧を受けてトルコに逃れて、住み着いたというのだ。その数は20万人程度、と推測されている。
したがって、トルコ政府はシリア出身のPKKメンバーが投降した場合、一般のクルド人同様に、取り扱うようになるかどうか、という問題が残されている。ただ、この点についても、これまでの間に、トルコ政府とシリア政府との間で、十分に話し合われていると思われる。
したがって、今回のシリア政府の提案は、現実味を持った提案であろうと思われる。最終的には、平和な状態がクルド人の生活向上にも、繋がるということであろう。その時期が到来しつつある、ということではないか。