「ブレア元首相のイラン攻撃擁護論」

2010年9月 2日

 イギリスのブレア元首相が、イランに対する軍事攻撃を、容認する発言を行った。容認発言というよりは、直截的に言うならば「攻撃すべし」という、内容になっている。

 ブレア元首相はイランが核兵器開発を進めており、このままで推移していけば、イランは核兵器を持つことになるから、極めて危険だというのだ。そしてその危険は、アメリカやイギリスというよりも、まず周辺のアラブ諸国にとって、第一番目に危険なものとなることを、警告している。

 この発言がなされたのは、あるいはクウエイトのシェイク・ジャーベル、ムバーラク国防相の発言に、怒りを感じてなされたものかもしれない。シェイク・ジャーベル、ムバーラク国防相はイラン攻撃で、クウエイトはイラン攻撃の、ランチ・パッドにはならない、と発言しているのだ。

 ブレア元首相にしてみれば、アメリカやイギリスがこれまで、膨大な費用とちの犠牲を払って、イラクやアフガニスタンを攻撃し、今、イランとの緊張関係にあるのは、自国の防衛よりも、湾岸諸国の防衛のためなのだ、ということになるようだ。

 ブレア元首相は、イランが核兵器を所有することになれば、それはイスラム・テロを力づけ、周辺の王制諸国は軒並みに、体制を崩壊されてしまう、ということであろう。

 しかし、イランと隣接するクウエイトにしてみれば、自国内にアメリカ軍の基地を抱えており、もし、イランとの戦争が始まり、クウエイト内の基地を使用されれば、第一番に攻撃される、危険にさらされているのは、自国だという恐怖感があるのだろう。

そうしたクウエイトの不安に、まさに喝を入れたが、ブレア元首相の今回の発言であろう。確かに、イランが核兵器を開発しても、それをアメリカやイギリスまで飛ばすには、まだまだ時間がかかるだろう。

 しかし、核兵器を所有したということで、イランが元気を増せば、イランの支援するレバノンのヘズブラや、パレスチナのハマース、そして、湾岸諸国の二等市民扱いを受け続けてきたシーア派国民が、立ち上がる危険性は、多分にあろう。

 ブレア元首相はそのことを、クウエイトのシェイク・ジャーベル、ムバーラク国防相の発言が出たところで強調し、湾岸諸国全部に対し、アメリアとイギリスの対イラン政策に、黙って従え、と言いたいのであろう。

 湾岸諸国ではいま、イランの勢力が増し、シーア派の動きが、活発化していることは確かだし、アルカーイダ()の危険性も、すぐそこまで迫っている。湾岸諸国は、ブレア元首相の言うように、アメリカ・イギリスの対イラン政策に追従するのが得策か、あるいは独自の外交を展開すべきなのか、選択は正念場を迎えているということであろう。