イスラエルの150人の学者が、西岸地区の非合法入植地での講演など、アカデミックな活動を、拒否することを宣言した。これは、昨今のイスラエルの国際的孤立のなかでは、起こるべくして起こってきた動きであろう。
これに先立ち、芸術家タレントなどの、53人からなる集団も、入植地での活動を、拒否することを宣言している。この場合は、アリエル市での催し物を、拒否したことに端を発している。
こうした動きは、あるいはネタニヤフ首相とマハムード・アッバース議長とが、アメリカのオバマ大統領によって、強引な和平のための、直接交渉を飲まされたことと、関連しているのではないか。
なぜならば、マハムード・アッバース議長はこの直接交渉の成否は、イスラエル側が、入植地建設を凍結するか否かにかかっている、と言っているからだ。確かに、和平の交渉をしていると同時期に、非合法の入植活動がイスラエル人によって、西岸地区で進められたのでは、マハムード・アッバース議長はパレスチナ人に対して、会議参加の正当性を説明できなくなろう。
すでに会議の始まる以前から、パレスチナの著名人の多数が、直接交渉に参加することに反対していたし、パレスチナ各組織も反対していた。この直接会議なるものが、何の成果も生まないだろうというのがその理由だが、アラブ連盟のアムル・ムーサ事務総長は、会議開催前の段階で、会議開催の意味がない、成果はない、と言い切っている。
イスラエルのインテリや芸術家たちが、今回入植地での活動を拒否したことは、一見、イスラエル人の譲歩、妥協のように見えるが、そればかりではあるまい。イスラエルが妥協しそうだという雰囲気を世界に伝え、交渉を結果的には支えることになる、可能性があるからだ。
もう一つ考えられることは、イランや強硬派アラブが主張するように、イスラエルの頑迷な、パレスチナ問題への対応は、結果的にイスラエルの破滅につながる、という不安によるのではないか。世界、なかでもヨーロッパ諸国では、露骨なまでのイスラエル批判が、最近になって広がってきているからだ。
今回、入植地での活動を拒否したインテリのなかには、イスラエルは1967年のラインにまで撤退すべきだ、という意見もあるが、既に入植者の数は50万人を超え、100以上の入植地がある状態では、なかなかそうもいくまい。
いずれが真意かは別に、イスラエル国民の間から、行き過ぎたイスラエル国民と、政府のパレスチナに対する浸食に、抗議の声と行動が起こったことは、評価すべきであろう。「奢れる者は久しからず」という言葉は、洋の東西を問うまい。