ブッシュ大統領とは、家族ぐるみの付き合い、というイメージをアメリカ国内外に流し、サウジアラビアを代表する、対米外交官という名誉を、一身に受けていた、プリンス・バンダル大使が辞任して、ある時間が過ぎると、彼は全く表舞台に、現れなくなって久しい。
彼がアブドッラー国王に最後に会ったのは、2008年の12月であり、場所はサウジアラビアの港町、ジェッダ市だったと伝えられている。これに先立って、2005年10月にプリンス・バンダルは、国家治安組織の委員にも、指名されていたということだ。
彼が表舞台に顔を出さなくなって、すでに2年以上の時が、経過しているが、そのために、幾つもの憶測が飛んでいる。何といっても、アメリカの主要マスコミが華々しく、彼の活躍を伝えていただけに、これだけの長期間にわたって、姿を見せないということは、不思議でならないということだ。
プリンス・バンダルは、実はサウジアラビアの兵器取引に、深く関係していた、という説が出てきた。彼の実父であるスルタン王子が、兵器輸入の最高責任者であることから、それはまんざら、噂のレベルだけではあるまい。
ところが、その先があるのだ。彼は武器、兵器について詳しいことと、その配布について、ある程度の権限を、有していたのであろうか。プリンス・バンダルはイラクのテロリストに、資金と武器を提供している、あるいはしていたという話が、持ち上がってきているのだ。
加えて、パキスタンやレバノンのテロ組織にも、資金と武器を手配していたというのだ。
これ以外にも、プリンス・バンダルがサウジ王家に対する、権力転覆テロを起こそうとして、失敗したのだと語る、サウジアラビア反体制派の人物もいる。しかし、この説は、一概には信用しかねる。たとえどれだけ、アメリカ政府との関係が強かったからと言え、アメリカ政府が彼に、サウジアラビア王家に対して、打倒の計画を許したとは、思えないからだ。
今の段階では、何が真実かは分からない。いずれにしろ、あの世界のマスコミを騒がせた、プリンス・バンダルが表舞台から、消えて久しいことは事実だ。彼が本当に、地中に潜ったのではないことを、祈るばかりだ。