エジプトの大統領選挙が、来年に迫っているなかで、誰が大統領に立候補するのかが、大きな話題になっている。
いまでのところ、元IAEAの事務局長だったムハンマド・エルバラダイ氏が、最も際立った動きを示しているが、だからと言って、彼が一馬身リードしている、ということにはならないようだ。
それは、彼が大統領に立候補する基盤が、いまだに出来上がっていないからだ。一定の地方と国会の議員の推薦(250人)を受けるか、あるいは既存の政党から立候補するしかないのだ。しかし、ムハンマド・エルバラダイ氏に、最も近いように見えるムスリム同胞団も、土壇場になった時に、彼を推薦候補としてくれるかどうか、疑問が残っている。
それは、ムハンマド・エルバラダイ氏が、世俗派であることに、起因していようし、彼を推して、ムスリム同胞団のメンバー以外に、大統領を当選させるとは思えないからだ。
たとえ、ムハンマド・エルバラダイ氏を推す、大衆組織が百万人の署名を集めたとしても、それは政治的ファッションの動きでしかない、というのが政府与党の、受け止め方であろう。
他方、ムバーラク大統領の次男、ガマール氏については、実質的に最も大きな力を持っている軍内部で、二つの意見があるようだ。若手将校たちはガマール氏を推すことによって、将来的な自分たちの既得権益を、守ろうと思っているようだが、年配者たちはそうでもなさそうだ。
軍の年配たちにしてみれば、本当の実権は自分たちにあるのだから、軍が推薦する人物、つまり軍人が新しい大統領に、就任すべきだということであろう。ガマール氏には軍歴はなく、どう考えても軍部の推薦を受けることは、難しいのではないか。
そうなると、大統領候補として考えられるのは、ムハンマド・フセイン・タンターウイ国防大臣か、オマル・スレイマーン情報長官ということになろう。しかし、オマル・スレイマーン情報長官の、国民からの支持は全くない。
また、ムハンマド・フセイン・タンターウイ国防大臣は、自身が高齢者であることから、大統領に立候補する意思はない、と既に公に語っている。そうなると、ムハンマド・フセイン・タンターウイ国防大臣が推薦する、軍幹部の誰か、ということになろう。
そうなると、以前に書いたサーミー・アナ―ン統合参謀長が、最も有力な候補になるかもしれない。すでに述べたように、彼とガマール氏の関係は、極めていいことも、可能性を感じさせる。