「イラク刑務所から重罪犯が逃亡」

2010年9月10日

 今週の水曜日、イラクのバグダッドにある刑務所から、死刑囚4人が逃亡することに成功した。この4人は、アルカーイダや旧サダム・フセイン・グループに関わりのある、極刑に値する受刑者だったようだ。

 彼らが入っていた刑務所は、アメリカ軍の施設にあったもので、その後、イラク側に引き渡された、カルフ刑務所だった。当然のことながら、警備は厳重であり、常識で考える限り、とても逃亡がかなうような場所ではないはずなのだが、実際には逃亡に成功したわけだ。

 以前にも、イラクでは刑務所から受刑者が、逃亡するというケースがあった。それは、2005年4月のことで、受刑者たちが刑務所内から、180メートルもの長いトンネルを掘って、逃亡したというのだ。

 考えようによっては、地面が砂地であろうから(その限りではないが)、180メートルのトンネルを掘ることは、意外に容易だったのかもしれない。

 しかし、今回の場合は、逃亡用のトンネルが発見されなかった。イラク警察が逃亡後に、調査をするのだが、逃亡方法がどんなものであったのか、全く見当がつかないということだ。

 その場合、考えられることは、内部に協力者がいて、彼らの手引きで、逃げ出したということであろう。イラク警察は十分な訓練を受けているわけではないだろうし、綿密な身元調査が行われているとも思えない。

 したがって、旧サダム・フセイン体制の側の人物や、アルカーイダにつながる人物が、警察のなかにもぐりこんでいても、区別がつかないのではないか。アメリカ軍が全面撤退をした後だけに、その可能性は十分に考えられる。アラブ世界のワーシタ(仲介)が、ここでも役割を果たしたのかもしれない。

 もう一つ考えられるのは、イラク側によるものではない、別の内部犯行だ。その場合は、アメリカ軍の一部の、反戦的な考えを持った人物によるものだ。すでに、アメリカ軍のなかには、相当厭戦気分が広がっているとも聞いている。

 加えて考えられるのは、民間の警備会社の絡んだ、犯行ということだ。契約期間の延長には、イラク社会の危険が高まるほど、彼らの契約が延長されたり、規模が拡大されることがありうるからだ。

 想像はこの程度にしておこう。今の段階で言えることは、厳重なはずのイラクの刑務所から、いとも簡単に受刑者が逃げ出せる状況が、生まれてきているという現実だ。

 そのことは、今後のイラク国内の治安が、まだまだ不確かなものだ、ということだ。それでもアメリカ軍はイラクから、去っていくのだろうか。