何の結論も進展も期待できない、イスラエル・パレスチナ直接交渉が、アメリカのごり押しの下に、開催された。誰もが予想したように、結論は次の会議が、エジプトのシャルム・エルシェイクで開催される、ということだけだった。
この会議の無意味さについては、イスラエルのリーベルマン外相ですら、口にしている。ましてや、イラン政府は、会議は全く意味のないものであるどころか、パレスチナ人とムスリムに対する、裏切り行為だとみなした。
イランのアハマド・ネジャド大統領は「何を交渉する気か?」「誰を代表しているのか?」「何について話し合うのか?」と厳しい批判の言葉を、パレスチナ自治政府議長の、マハムード・アッバース議長に向けている。
これに対して、パレスチナ自治政府側は「イランの関与は拒否する。」「イランの援助などいらない。」という立場を示した。しかし、それは正解なのだろうか。パレスチナ問題はイスラム教の第三の聖地、エルサレム問題を含むものであり、パレスチナ人だけの問題、とすることは出来ない。
イスラム教徒全員の問題なのだ。したがって、イランがパレスチナ問題に関与することは、当然の権利であろう。また、パレスチナ側にしてみいれば、エルサレム問題を抱えていることから、世界中のイスラム諸国に対して、支援と援助を強要する権利が、あるということにもなろう。
イランばかりではなく、多くのイスラム諸国のインテリたちは、アメリカ主導による直接交渉は、何の成果も生まないことを、十分予測していたし、結果はそうなった。
今後、パレスチナ自治政府は、自身の意思とは別に、強硬な立場を示さなければならない状況が、発生してくるのではないのか。その時に、イラン側は現在のような、拒否の立場を示している、パレスチナ自治政府の擁護に、回るだろうか。
早晩、イスラエルとレバノン、イスラエルとハマース、イスラエルとシリアの緊張した状況が発生してくるであろう。その時、パレスチナ自治政府は蚊帳の外に、いられるというのだろうか。もし、蚊帳の外にいようと思えば、完全にパレスチナの大衆から、見放されるであろうし、アラブ諸国からは、軽視されることになろう。パレスチナ自治政府にとって重要なのは、いま飴玉をくれるアメリカやイスラエルよりも、将来のパレスチナを支えてくれる、アラブ諸国と、イランを始めとするイスラム諸国ではないのか。