「サウジアラビアのモスクに銃撃」

2010年9月 3日


91日、サウジアラビアの首都リヤドで、起こってはならないことが起こった。それは、モスクで礼拝中のイマーム(礼拝の主導をする人)と、ムアッジン(礼拝の呼びかけのアザーンをする人)、そして偶然であろうが、その礼拝に参加していた人に向けて、銃撃を加えるテロリストが現れたのだ。

 銃撃を加えたテロリストの数は3人で、犯行後現場からトヨタのカムリで逃走したということだ。そのことは事前に犯行が、十分に準備されたものだということであろう。

 サウジアラビアの警察の調べでは、あくまでも個人的ないさかいが原因だとし、大きな問題ではないと説明しているがそうであろうか。

 サウジアラビアは自他共に認める、イスラム教の総本山の国、国民は信仰深く、穏やかな性格の人たちが多い。

 今回の襲撃は銃を持って行い、しかもモスクに対して、そのイマームとムアッジンと、礼拝者に対して発砲されている。モスクの名はアミール・スルタン・モスクだったことも、何らかの意味を有しているのであろうか。スルタンはサウジアラビアの王族、国防相の名前だからだ。

 起こるはずのない、しかもモスクでの銃撃テロは、やはり単なる個人的な問題では、ないのではないか。その事件の裏には、もっと大きな理由があるように、思えてならない。

そこで、あくまでも推測だが、この事件に裏があるとすれば、どのようなことが考えられるだろうか。

第一に考えられるのは、イランとサウジアラビアとの関係であり、サウジアラビアがアメリカイスラエルが考えている、イラン攻撃について、積極的にこれに協力する姿勢を、採っていることに対する、警告ではないか。

第二に考えられるのは、イランとは関係なしに、サウジアラビアのシーア派国民が行ったのではないか。サウジアラビアでは、シーア派国民は二級市民として、差別されているからだ。

第三に考えられるのは、イエメンだ。このところ、サウジアラビアとイエメンとの関係は、悪化の一途をたどってきている。イエメン政府の判断によれば、サウジアラビア政府はイエメン南部の分離派に対して、武器、資金、訓練を、与えているということだ。加えて、サウジアラビアと隣接する、イエメン北部のアルホウシ部族が、イエメン政府と武力衝突した時も、サウジアラビアはこのアルホウシ部族を支援していた。

 リヤドのモスクで起こった事件が、サウジアラビア警察が説明したように、個人的なトラブルの結果であることを祈ろう。イエメンとサウジアラビア、あるいはイランとサウジアラビアの衝突では、ことは簡単には収まらないからだ。