「ブレア元首相の著書がイラク戦争の秘密を明かす」

2010年9月 2日


 イギリスのブレア元首相が、自著の本を出版した。タイトルはジャーニー(旅路)とでも訳すのだろうか、彼のこれまでの行動を、記録に留めた本のようだ。この本は736ページからなる、まさに大著だということだ。

そのなかで、ブレア元首相は13章から22章まで、合計約110ページを、アメリカのタカ派について、書いているということだ。述べるまでも無く、アメリカのタカ派とは、デイック・チェイニー氏と、ネオコンのことであろう。

ブレア元首相の本によれば、デイック・チェイニー氏は、サダム体制の打倒を、早い段階から考えていたようだ。それは、1998年ごろ、つまりクリントン氏が大統領の時代から、始まっていたようだ。

そして、デイック・チェインー氏は、単にサダム体制を倒すばかりではなく、世界そのものを変えようと、思っていたということだ。彼の計画では、イラクのサダム体制ばかりではなく、シリアのアサド体制、イランのイスラム体制に加え、レバノンのヘズブラやパレスチナのハマースも、打倒すべき敵と、捉えていたということだ。

この本の話は、アラビア語のアル・ハヤート紙で紹介されたものだが、どうやら、アメリカはそれほど早急に、サダム体制を打倒する気では、なかったようだが、ブレア氏の働きかけで、サダム体制打倒が早まった、ということのようだ。

ブッシュ・シニアが湾岸戦争の開始を、躊躇しているときに、尻を叩いてけしかけたのは、サッチャー元首相だといわれていたが、ブレア氏もサッチャー人気に、あやかりたいのであろうか。

この本の内容について知りたい人は、英語版か、多分近日中に、日本語版が出ることであろうから、それを読むべきであろう。ただし、イギリス人は常にある種の計算をして、行動するということを、念頭に入れて読まないと、大きな勘違いを、してしまう可能性があろう。

外国、なかでもイギリスは国ごと戦略的であり、その国の首相を務める人物は、当然戦略家である。そうであるとすれば、彼らの発言や著書は、しかるべき効果を狙って、発表されるということだ。

残念ながら、いまの日本人には本を疑って読む、という習慣と能力は、皆無に等しいのではないだろうか。活字は信頼に値する、と幼児から刷り込まれているために、起こっている現象であろう。

そう考えると、本を読むことを、安易に進められない、ということであろうか。いずれにしろ、736ページということは、日本語版が正確に訳さていれば、800ページを優に超えるのではないか。それをじっくり、考えながら読みきるのは、容易ではあるまい。