ここにきて、IAEAはイランが核兵器を製造する、懸念を明らかにした。それによると、イランは今年5月の段階で2・4トンであった3・8パーセントの濃度の低濃縮ウランの量が、最近では2・8トンにまで、増えたということだ。
この低濃縮ウランの他に、イランには既に、20パーセントにまで濃縮したウランが、22キロあるということだ。
イランがこのスピードで、濃縮作業を継続していけば、90パーセントの濃度の、核兵器製造に使える濃度に至るのは、時間の問題だということだ。結果的に、イランは2014年には核兵器の製造が可能だ、とアメリカとイスラエルの情報機関は分析している。
イランはこうした懸念のなかで、IAEAに査察を自由に行わせていない、と国連は不満を明らかにすると同時に、イランの核兵器製造への疑惑を、拡大している。IAEAの報告によれば、イランは核施設への立ち入りを拒んでおり、確実な査察が出来ない、状態にあるということだ。
述べるまでもなく、国連やIAEAがイランの核開発に対して、その目的に疑問を抱いているが、イラン側はあくまでも平和利用であり、医療用やエネルギー需要を満たすことが目的だ、と主張し続けている。
こうなると、アメリカやイスラエルによる、イランの核施設への攻撃ということが、空絵事ではなくなってくるであろう。湾岸諸国は押し並べてイランへの融和政策と同時に、アメリカやエジプトに対する依存心を強めてもいる。
それを見抜いてか、エジプトのムバーラク大統領は、イランの核開発で湾岸諸国が、危険にさらされている、と強調している。それは述べるまでもなく、イランの核開発に加え、イランによる湾岸諸国のシーア派に対する、支援を意味しているのであろう。
サウジアラビアもバハレーンもクウエイトも、押し並べてイランの支援を受けていると思われる、シーア派自国民の活動が活発化してきているからだ。たとえイランがこれら湾岸諸国のシーア派を、直接的には支援していないとしても、イランが強国になっていくことそのこと自体が、湾岸各国のシーア派国民を、十分に勇気づけているものと思われる。
イラクがその好例であろう。人口比の問題もあるが(シーア派が60パーセントを超えている)、イラクではシーア派国民が、あくまでも政治の中心であり、それぞれのシーア派に対し、イランは強い影響力を有している。
イランの湾岸諸国への影響力は、今後、イラク同様に強まっていくかもしれない。イランの核兵器開発に、湾岸諸国やアラブ諸国、そしてアメリカ・イスラエルが、異常なまでに敏感なのは、政治に与える影響も大きいからであろう。