次期エジプト大統領選挙に、立候補するかしないか、なかなか態度を鮮明にしないガマール氏(ムバーラク大統領の次男)に、彼の取り巻き連中たちが、業を煮やして、行動を起こし始めている。
ムバーラク大統領の健康問題が、ここにきてほとんど希望がなくなりかけ、早い時期に、ガマール氏が立候補を宣言し、行動を起こさなければ、出遅れになり、場合によっては他候補に敗れることもありうる、と取り巻き連中たちは、考えているようだ。
彼らはガマール氏の意向を確かめず、エジプト中にガマール氏擁立の、ポスターを張り巡らした。それは、ムスリム同胞団やガド党、エルバラダイ氏の支持団体から、攻撃を受ける対象になり、野党側は「ガマールにはエジプトは大きすぎる」というポスターを作り、国内いたるところに、張り出されることとなった。
ガマール氏がなかなか、立候補を口にしないのは、父親が終身大統領でありたい、という願望を尊重してだ、という説が流れているが、それに加え、彼自身の健康問題が、あるからであろう。
しかし、もしムバーラク大統領が、突然死亡するようなことになれば、ガマール氏当選の可能性は、非常に厳しいものになるだろう。日本とは異なり、弔い合戦での同情票を獲得して、選挙に勝つというパターンは、期待出来ないのがアラブ世界だ。悪い表現をするならば、アラブ世界とは、溺れる犬に石を投げつける、世界なのだ。
それにもかかわらず、ガマール氏の取り巻きが、活発な擁立行動を取ることに、国民民主党内のベテラン議員たちからは、反発が出ているようだ。最近流れてきた情報によれば、与党内で次期大統領候補の選出で、党内に分裂が生じているということだ。
現実はそれほど、センセーショナルなものとは思えないが、若者層の先走りは、ムバーラク大統領に対して、失礼だという感情は、ベテラン議員のなかにはあろう。
若いビジネスマンたちが、ガマール氏の支持基盤になっているのだが、彼らが躍起になって、ガマール氏を推す裏には、彼らの利権がからんでいることも否めない。ガマール氏の取り巻き連中の起こした、経済スキャンダルはこれまで、幾つも話題に上っていた。レバノン出身の美人歌手の委託殺人でも、ガマール氏と親しい大金持ちが、その命令を下したとして、現在獄中にある。彼が軽度の罪で済むか否かは、ガマール氏が大統領に就任できるか否かにも、かかっているのだ。
加えて、エジプト政府が宣言した、原発建設も当然のことながら、大統領選挙に絡んで来よう。ガマール氏の兄である、長男のアラーア氏の立候補も噂されており、取り巻きたちにしてみれば、気が気ではないだろう。