イランのブシェール原発に燃料棒が入ることになり「イランが核兵器を持つのではないか?」という不安が、イスラエルのなかでますます高まっている。そのことは、イスラエル軍内部の意見の対立、分裂状況からも推測できる。
イスラエルはイランの核兵器開発を、武力をもってしても阻止すべきか、アメリカがそれに同調しなくてもやるべきか、イランは本当に核兵器を開発し、それをイスラエルに向けて使用するのか。イスラエルは政府も国民も、いまそのことで頭が一杯であろう。
つまり、イスラエルは国内では、イラン核開発への不安が高まり、頂点に達した場合、単独でもイラン攻撃を実施する、可能性があることを、否定できなくなっているといことだ。その場合、結果的に、アメリカはイスラエルを放置できず、参戦せざるを得なくなる、と考えるほうが妥当であろう。
そのイスラエルの不安から来る、イラン攻撃の可能性に対し、ある意味では、イスラエルよりも敏感に、かつ強い不安を抱いているのは、イランに隣接する湾岸諸国だ。
イスラエルがイランを攻撃し、それにアメリカが加担することになれば、ほとんどの湾岸諸国は、アメリカ軍の基地を抱えていることから、戦争に巻き込まれざるを得ないからだ。
バハレーンとイランとは、歴史的にも宗派的にも、多くの複雑な問題を抱えている。バハレーンのシェイク・ハーリド・ビン・アハマド・ハリーファ外務大臣が、イランを訪問し、アハマド・ネジャド大統領を始めとする、イラン側の高官らと会談している。
(イランはバハレーンを、自国の領土だと考えているし、バハレーンのイスラム教徒の多くは、シーア派でありイランと同じ宗派なのだ。このため、これまでも何度と無く、イランが背後から支援しているのではないか、と思われる破壊工作が起こっていた。)
その後で、バハレーンのシェイク・ハーリド・ビン・アハマド・ハリーファ外相は「バハレーンはイランを始めとする、地域諸国への攻撃の、前線基地にはならない。}と語った。
そして外相は「アメリカとの防衛合意は、あくまでも防衛目的であり、攻撃が目的ではない。またバハレーンの基地には、攻撃的兵器は蓄積されていない。」とも語っている。また、同外相は「湾岸のアラブ諸国は、押しなべて、いかなる武力衝突も、戦争も望んでいない。}と語った。
これとほぼ時を同じくして、アラブ首長国連邦に駐在する、イランのムハンマド・レザ・ファイズ大使は、イランとアラブ首長国連邦の関係は、確かなものであるとし、エネルギー部門でも協力関係は確かなものになっている、と語っている。(アメリカを中心とした西側先進諸国の、イランに対する経済制裁で、アラブ首長国連邦からイランへの、ガソリンの輸出や通商制限を、させない目的の発言であろう。)
つまり、バハレーンを代表とする、アラブ湾岸諸国はいま押しなべて、イラン攻撃を恐れているということだ。