レバノン政府が正式に、在レバノン・パレスチナ難民に、労働許可を与えると発表した。声明はナビ・ベッリ議会スポークスマンによって、公表さらたものだが、これは実質がどうであれ、大きな躍進と言えるだろう。
これまで、レバノンに居住するパレスチナ難民は、高度な教育を受け、専門的な知識や技術を持っていても、それを生かして就職することが、出来ないでいた。そのパレスチナ難民の前に、横たわっていたバリアが、解かれたということであろう。
しかし、現実はそれほど革命的な、変化にはならないかもしれない。例えば、薬剤師や医師、エンジニア、弁護士などが、就職するか自分でオフィスを持つ場合には、レバノンの職能組合のメンバーになることが必要だからだ。
パレスチナ人の就業の自由が認められても、現実にはそうはならない職種が、たくさんあるのだ。しかし、そうはいえ、今回のレバノン政府の決定で、パレスチナ難民の多くは、将来に対する希望が、持て始めているのではないか。
このレバノン政府の新たな、パレスチナ難民に対する処遇を巡る決定に、ネガテイブな面は無いのだろうか。一番気にかかるのは、この結果、パレスチナ難民の帰還権は実質的には、永久に認められなくなるのではないか、ということだ、
イスラエル政府の高官たちは、事あるごとにパレスチナ難民は、帰属するアラブ各国が市民権を与え、居住を許可し、その国の国民になっていくのが、一番いいと主張してきている。
その結果、イスラエルはパレスチナ難問を、周辺のアラブ諸国から、受け入れなくてよくなるからだ。つまり、レバノンにおける、パレスチナ難民に対する就業の許可は、同時に、イスラエルの主張する「パレスチナ難民に帰還権はない」とする立場を、補強することになるのではないか、ということだ。
したがって、うがった見方をすれば、今回のレバノン政府の「パレスチナ難民に対する就業許可決定」は、実はアメリカなどからの、圧力の結果だったのではないか、ということだ。
レバノンには現在、40万人程度のパレスチナ難民が、居住していると言われているが、彼らが自由に経済活動を始めた場合、将来に、どのような結果が出てくるか、想像もつかない。
したがって、パレスチナ難民に就業許可が出たからと言って「めでたし、めでたし」とばかりは、言っていられないのだ。