イスラエルのネタニヤフ首相が、月曜日にギリシャを訪問した。これは、イスラエルの首相の訪問としては、初めてのことであり、大きな話題を呼んでいる。当然のこととして、ネタニヤフ首相が何故この時期に、ギリシャを訪問したのか、という訪問理由について、関心が集まった。
ネタニヤフ首相はギリシャで、次のような発言をしていることが、この疑問への答えに繋がるかもしれない。「イスラエルはギリシャの発展に、出来るだけの支援を、送るつもりだ。」と語っているのだ。
これに対して、ギリシャのパパンドレウ首相は「ギリシャとイスラエルとの関係が、トルコとイスラエルとの関係と、競争になってはならない。」と語っている。つまり、パパンドレウ首相は最近、フロテッラ号での事件などから、悪化しているトルコ・イスラエル関係のなかで、ギリシャがイスラエルとの関係を強める意思はない、ということであろう。
ギリシャにしてみれば、イスラエルとの関係と、トルコとの関係を比べた場合、経済的メリットはトルコの方が大きい、と判断しているのではないか。これまで、ギリシャとトルコとの関係は、極めて悪かったのだが、ギリシャの経済危機の後に、大きな関係改善の兆しがみられるからだ。
ギリシャ政府はそう判断しているであろうし、ギリシャ人の左翼層は、ネタニヤフ首相の訪問に反対し、訪問反対デモを繰り広げてもいる。
イスラエルの本音はどうであろうか。イスラエル政府はトルコの最近の、冷たい仕打ちに対する、抵抗としてのゼスチュアーで、ギリシャとの接近を演じたのであろうが、それはイスラエルの本心ではないことは、トルコには手に取るように分かるだろう。
ギリシャは経済的に破たん国家であり、軍事的に脆弱である以上、イスラエルにとって、中東・地中海地域での、強力なパートナーとはなり得まい。そのことに加えて、トルコにはアラブ諸国や、イランに対する影響力があるが、ギリシャにはそうした力も、外交関係もない。その点、現段階では冷たい関係とはいえ、トルコとの関係は重要であり、根強いものがあろう。
イスラエルの政府高官は、今回のネタニヤフ首相による、ギリシャ訪問について「ギリシャとの軍事面での協力関係を強化する意向だ。」と語っているが、しかし、それはすでに述べたように、あまり意味がないのではないか。
ギリシャがトルコに代わって、イスラエル人旅行者を大量に受け入れるようになれるかというと、それも思うようにはいくまい。それは、ギリシャ国内が極めて、不安定な状態にあるからだ。
観光客を呼ぶには、国内が安定しており、外国人観光客にとって、治安上の不安が無いこと、受け入れ国の人たちが、笑顔で迎えてくれること。施設が完備され、保全されていることなども、重要だからだ。その点から見ても、ギリシャはトルコには、勝てないだろう。