いま、世界中のイスラム諸国は、断食月(ラマダン月)の真っ最中だ。30日間に渡って行われる断食は、宗教義務であり、それまでの多くの間違いと、罪を洗い流してくれるということで、思いがけない人物が、極めて真面目に実行していたりして驚かされる。
イスラム教徒にはやはり、どんな遊び人でも、イスラム教のDNAが体内に組み込まれているのだろう。大酒飲みやプレイボーイが、いたって殊勝な顔で、腹をすかしているのを見ると、ほほえましくもあるが、宗教の力の大きさを、実感させられる一場面でもある。
その宗教行事であるラマダンの断食は、日の出2時間前ぐらいから始まり、日没の5-6分過ぎまで、飲食煙草を含めて口から入るもの、一切が禁じられるのだが、日没後の水と食事の摂取量は、通常の1,5倍から2倍にも達する。
彼らはお互いに近隣友人親せきを招待しあい、毎晩がお祭り騒ぎになるのだ。日没後に軽く食事を摂り、マグレブの礼拝(日没後の礼拝)を行い、しばらくすると今度はタラーウイの礼拝(ラマダンつきに行われる、通常の礼拝以外の特別の礼拝)に、モスクに向かうことになる。そして、それを終えると再度、食事がふるまわれ、そして次の日の日の出前には、断食の苦痛を軽減するための、スフールの食事が用意される。
その食事を摂り、ファジルの礼拝をし、断食を立派に果たします、という宣誓が行われ、その日の断食がスタートする。実際にそのまま仕事をしそうなものだが、そうではない。多くのイスラム教徒は、その後、昼と夜とをたがえて眠り、日没の少し前に起きて断食の終わる時間を、待つということになる。
もちろん、そうした輩ばかりではなく、時間こそ短縮されるが、通常とあまり変わらない仕事ぶりを発揮する、善良なイスラム教徒も、沢山いることはいるのだ。
こう説明すると、ラマンダンの断食月は、イスラム教徒にとって、年に一カ月の、大事な宗教行事の月であると同時に、お祭り月でもあるということだ。したがって、この月の食料供給事情がどうかということは、政府に対する支持不支持にも、直接影響を及ぼすことになる。
残念なことに、今年のラマダンは食料品の高騰が、イスラム諸国のなかで、目立っている。それは、干ばつや災害による、穀物の収穫不足が原因だ。富裕なイスラム国の場合は、政府の補助金で、価格は引き上げられずに済むが、貧困国では、穀物の値上がりが、直接、しかも痛烈に一般家庭の台所を、襲うことになる。
今年は、エジプトとイエメンが、大変なようだ。エジプト政府は政府批判が高まることを警戒し、貧困家庭にラマダン・バッグ(中に食料が入った袋)を、大量に配布している。