アメリカがイランの核兵器開発疑惑に激怒し、新たな制裁を強化させることを決めた。そして、それは一応国連の決議による部分もある。つまり、形式的には国際社会の意向に沿った決議、ということになるのだが、実際に実効性があるかというと、そう簡単ではないようだ。
そもそも、国連でのイランに対する制裁決議は、アメリカのごり押しによって、ぎりぎりのところで決議された、という経緯がある。ロシアや中国は裏に、幾つもの条件を付け、アメリカの意見に賛同した、という認識が一般的だった。
曰く、ロシアや中国は国連決議が出された後も、イランとの関係を維持していく、それに対して、アメリカは強い批判を寄せない、ということであった。ロシアはイランに対して、武器を輸出することを継続し、これまで手掛けてきた、核施設の建設にも協力していく。中国もイランとのエネルギーを中心とした、経済関係は継続するということだった。
ここにきて、実情はどうかというと、中国はトルコと一緒に、イランに向けてガソリンを輸出している。このガソリンは兵器を稼働するための、燃料であることを考えると、当然、制裁が第一に実行されるべき物資、ということになるのだが。
ロシアはロシアで、以前に契約が交わされた、S-300ミサイルの引き渡しを遅らせてはいるが、それが何時まで続くのかは分からない。イラン側はこのミサイルについては、制裁以前の合意であり、制裁は解除されるべきものだ、と主張している。
ロシアは多分に、S-300を含め兵器のイラン向け輸出は、時間だけの問題ではないか。つまり、時期が来れば、イランに兵器を引き渡すということだ。ロシアはイランに対する、アメリカの単独制裁については、反対の立場を明らかにしている。
それではもう一つの国、トルコはどうなのであろうか。トルコはブラジルと共に、イランに対する制裁に反対した国であり、現在もイランに向けて、ガソリンを輸出している。一説によれば、7月のイラン向けガソリン輸出は、微減しているということではあるが、輸出そのものは停止していないのだ。
つまり、具体的にはロシア、中国、トルコといった大国が、こぞって実質的な制裁破りを、しているということだ。加えて、スイスの企業EGL社も、イランとのガス輸入契約を、維持し続けている。
EGLの場合は、2007年に交わされたガス輸入契約であり、その額は180億ユーロにも上るものだ。この契約は25年の期間となっている。
アメリカは実を取らず、あくまでも名だけを取った、ということでなのであろうか。