湾岸諸国では日中の気温が、確か40度を超えると、作業が中止される法律があった。しかし、実際には40度を超えても、40度未満として仕事を続けさせられている、という話を何度か聞いたことがある。
まあ5,6月頃から9月の終わりごろまで、40度を超える日がほとんどの国では、仕方のないことかもしれない。
外労働者を雇っている、現地の企業経営者にしてみれば、出来るだけ効率的に彼らを使うためには、その程度のズルはやるということであろう。
しかし、それがラマダン月になると話は別だ。述べるまでもなく、ラマダンの断食は、日の出二時間ぐらい前から日没まで、水も食物も口にしないことになっている。これでは炎天下で働く、労働者の体がもつまい。というよりも、病気になる人が出て来よう。
特に、今年はラマダンが8月10日か11日から始まることもあり、日中の長さが長く、しかも、8月の最中とあって、暑さも相当に厳しい。日本でする断食ですら、皆いい加減参ったと思っているのだから、湾岸諸国などでの断食は、まさに苦しさとの戦い、ということになろう。
そんな中、アラブ首長国連邦のイスラム法学団体が、粋な判断を下してくれたようだ。アラブ首長国連邦政府の宗教庁は、ラマダン月の断食について、労働者は断食を免除される、というファトワ(宗教裁定)を発表したのだ。
このファトワが出されたのは、アラブ首長国連邦の宗教庁のウエッブに、石油採掘現場で働く労働者からの、問い合わせに答える形で下されたものだ。
石油の採掘現場は砂漠のなかにあって、暑さも相当なものであろう。そこで水も飲まず食事もとらずに、仕事をしたのでは、死人が出ても、不思議ではあるまい。
このファトワに対して他の湾岸諸国は、追随するのだろうか、あるいは金儲けを続けるためのファトワ、とこれを非難し、自国だけは労働者に断食を、断行させるのであろうか。それはアッラーのご意思とは異なるはずだが。