イラクの元外相であったターリク・アジーズ氏が、イギリスのガーデアン紙のインタビューに答えている。彼の言葉には、イラクの現状に対する冷静な見方が、多く含まれていると思われる。
ターリク・アジーズ氏はイラクの現状について「もしアメリカ軍がイラクを放置して出て行くのであれば、狼たちに投げ与えられたようなものだ。」と語っている。その狼とはイラク国民であり、外国の勢力であろうか。
彼はまた「われわれはアメリカとイギリスの犠牲者だ。」と語り「アメリカは2003年の侵攻以来、自身が犯した失敗を正すまで留まるべきだ。」と語っている。
以下に彼のインタビューの中で語った発言の概要をご紹介する。
「彼らはわれわれの国を、あらゆる方法で殺した。殺したままで放置すべきではない。」
「現在のイラクは、アメリカ軍侵攻以前よりも、ひどい状態に陥っている。」
「サダムは30年間の間に、イラクを建ち上がらせたが、今は破壊され、以前よりも病気が増え、飢餓が増えている。」
「イラクが制裁を受けていたときですら、われわれは国民に2000カロリーの食料を支給していた。男も女も子供もだ。」
「クウエイト侵攻を決めるとき、それはアメリカとの戦争に発展する、と私はサダムに反対した。しかし彼は国民の総意に従うとして、クウエイト侵攻戦争を始めたのだ。」
「オバマがアメリカの大統領に選出されたとき、私は励まされた。彼はブッシュが犯した間違いを、正すだろうと期待したからだ。しかし、彼は偽善者に過ぎなかった。オバマはアメリカ軍をイラクから撤退させることにより、われわれを狼の巣に置き去りにしようとしているのだ。」
「サダムは嘘をつかなかった。私は彼を尊敬し愛している。彼が祖国に貢献したことは、歴史が証明するだろう。」
「私は私の最良の友(サダム)を、非難するつもりは無い。」
これらのターリク・アジーズ氏の、ガーデアン紙に対する発言の、何処に間違いがあるだろうか。イラクはアメリカ軍が侵攻して7年が経過した今なお、毎日数十人が死亡し数十人数百人が負傷している。戦後の暗い影は、いまだにイラク全土を覆っているのではないか。
ガーデアンの記者は、最後のターリク・アジーズ氏が「私は自由になるまでサダムを非難するつもりは無い。自由になったら私の最良の友についても反論できよう。}と語ったことを、ターリク・アジーズ氏が反サダムである、と決め付ける材料を引き出した、と考えたがっているようだが、そうではあるまい。もしそうすれば、ターリク・アジーズ氏は彼自身の全生涯を、否定することになるのだから。