パキスタンの州の名前変更

2010年8月 6日

現地からの報告
 

ここ1週間ほど、大きくパキスタンのカイバル・パシュトゥンハ州(Khyber Pakhtoonkhea Province)で大規模な洪水と言う報道がされている。

この耳慣れない州名は、以前は北西辺境州(North-West Frontier Province、略称:NWFP)と言っており今年415日に変更された。この名前変更が、不安定なパキスタン情勢をより不安定にしかねない状況となっている。

 

元々、この地域は、国境を接しているアフガニスタンとの共通の民族パシュトゥーンの領域で、主に使われる言語はアフガニスタンと同じパシュトー語で、パキスタンで標準語として使われているウルドゥー語は州都ペシャワールやカラコルム・ハイウエー沿いの大きな町、アボタバット、マンセラなどの街では通じるが、都市部を離れるとしばしば通じない。

 

この地域はたびたびアフガニスタンの支配下に置かれており、隣国のアフガニスタンから多くの難民と共に、「アルカイーダ」も流れ込んでいるが、この地域の住民にとってパキスタンと言う国を考える以前に、親戚或いは同胞と言う感覚を持っている。


この新たな州名のカイバルは、アフガニスタンとを結ぶ歴史的にも有名な「カイバル峠」を指し、パシュトゥンハはそのまま「パシュトーンの意で、この州名変更は、この地域の大部分では歓迎されているが、ウルドゥー語が使用される都市部では反対が根強く一部で武力闘争も生じている。


最近、パキスタンの最大都市カラチで、政党幹部の暗殺事件をきっかけに市内広域で住民同士の衝突が発生し、銃撃戦や放火で少なくとも46人が死亡、100人以上が負傷したと言うニュースが流れたが、これはインドから移住したイスラム教徒とパシュトゥン人との民族抗争と言われている。


宗教的な問題で自爆テロが日常化しているパキスタンの情勢が、この様な州名変更と言う事で民族抗争まで広がらない事を切に願うばかりだ。

                      

                                日本イスラム連盟事務局長古市信義