今週の水曜日、イラン南西部の街ハメダンで、アハマド・ネジャド大統領の演説会が予定されていた。その中で、アハマド・ネジャド大統領に対する、暗殺未遂事件が起こったという情報が、一瞬にして世界中を駆け巡った。
最初にこの情報を伝えたのは、イランの保守派のサイトだった、と言われている。しかし、そのサイトは間もなく、暗殺未遂は起こらなかった。あれは花火だった、と訂正したということだ。
そしてその後に、イラン側から流れてきた情報では、アハマド・ネジャド大統領の訪問に、歓極まった青年が花火を上げた、ということになっている。つまり、確かにそこでは花火か手榴弾かは分からないが、火薬性の物が爆発したことは事実のようだ。
これまで、アハマド・ネジャド大統領に対する暗殺未遂事件は、幾度か起こっているようで、今回もその一つだろうと、多くのメデイアでは受け止められたようだ。
イラン政府が大慌てで、この情報を否定したのは、アメリカとの緊張のなかで、あたかも反体制勢力がアハマド・ネジャド大統領暗殺未遂事件を、起したように伝わっては、国内的動揺を生み、外国もアハマド・ネジャド体制の不安定化を、推測すると考えたのかもしれない。
半官半民のファルス通信は、この出来事について、当初、自家製の手榴弾と報じているし、ハバロンラインというウエッブ・サイトは「アハマド・ネジャド大統領の車から、100メートルの距離で爆発があり、大量の煙が上がった。」と報じたが、すぐにその記事は抹消されている。
こうした種々のニュース・ソースの情報を眺めてみると、アハマド・ネジャド大統領に対する暗殺未遂事件は、断言はできないが、起こっている可能性の方が、高いのではないか。
今回のアハマド・ネジャド大統領暗殺未遂事件報道で、興味があるコメントをしていたのは、イスラエルのエルサレム・ポスト紙だった。エルサレム・ポスト紙は「アハマド・ネジャドの暗殺はイスラエルに得か?」というタイトルの記事を掲載しているのだった。
その記事を読むと、アハマド・ネジャド大統領のような強硬派が、イランのトップにいることにより、イランの核開発に対する世界の対応は、厳しくなったのだということだ。もし、昨年の選挙で、ムサヴィ氏が当選していたら、彼の微笑外交が効奏して、イランの核開発に対し、世界の対応はもっと緩いものに、なっていたろうというのだ。
つまり、このエルサレム・ポスト紙の記事は、イスラエルはアハマド・ネジャド大統領の暗殺に関与していない、ということを言いたいのであろう。