アラブ世界では英雄の名や著名人の名を、自分の子供や孫に付けたがる傾向がある。例えば、エジプトのガマール・ナセル氏が大統領だった時代に生まれた赤ちゃんには、ガマールという名を付けるのが流行した。
もしかしたら、現在のエジプトのムバーラク大統領の二男ガマール氏も、それが理由でガマールと命名されたのかもしれない。それこそ、悪い表現が許されるならば、この理由で、掃いて捨てるほど著名人の名前と、同じ名前の人たちがいるのだ。
地名や通りにも、英雄的人士の名前が付けられる場合がある。しかし、それは後々になって、問題化する場合もある。例えば、エジプトのサダト大統領を暗殺した、イスラム原理主義者であるイスランブーリ氏の名前が、イランのテヘランの通りの名になった。
その通りの名前は、いまだに変わっていないが、そのことがイランとエジプトとの外交に、悪影響を与え続けてきている。エジプトにしてみれば、自国の大統領を暗殺した犯人の名前が、他国の首都の通りの名に付けられることは、極めて不愉快なことであろう。エジプトは当然のことながら、通りの名前を変えるように、イラン側に申し入れたが、いまだに変わっていない。
最近、これらの例と、あまり変わらないことが起こった。パレスチナのガザ地区のハマース代表で、パレスチナ自治政府の首相に選ばれたイスマイル・ハニヤ氏が、自分の孫にトルコの首相の名前を付けたのだ。生まれたばかりの孫は、エルドアンという名前に決まった。
トルコのアラブ世界での人気は、このところうなぎ上りに上がっている。昨年のダボス会議で、トルコのエルドアン首相がイスラエルのペレス大統領を、ガザでの戦争犯罪人と怒鳴ったことが、エルドアン首相の人気を、アラブ世界のなかで高めた。
次いで、ガザ地区への支援物資を積んだ、トルコがチャーターしたフロテッラ号が、イスラエルの特殊部隊に襲撃され、9人のトルコ人が殺害されたこと、その後のエルドアン首相の強硬な対応は、アラブ大衆の間で、高く評価されることとなった。
ガザのハマースの代表であるイスマイル・ハニヤ氏が、自分の孫にエルドアン首相と同じ名前を付けたがる心理は、十分に理解出来よう。
願わくば、その赤ちゃんがトルコのエルドアン首相と同じように、勇気ある立派な国を代表するような、成人に成長してほしいものだ。