ニュースは人によって作られるが、なんとなく解せないニュースもある。今日ご紹介するニュースは、それが人道にあふれるものであろうが、どうも現実を踏まえていないような、気がしてならない。
ニュースは、ブラジルのルーラ・ダ・シルバ大統領が、イラン政府との関係も良好なことから、イラン政府を助けようと、同時に石打ちの刑に処せられようとしている女性も、救おうということから「この女性がブラジルに亡命することを受け入れる。」旨の発表を行った。
しかし、これは政治家の亡命でもないし、政治家の場合でも何処かの国に逃れている場合は、亡命も成り立とうが、その国にいる分には、亡命は成り立ち難いだろう。
まして、姦通罪で死刑が宣告されている、刑務所内に収監されている女性を、イラン政府が国外に出ることを、許可することは無かろう。イラン政府とすれば、イスラム法が適用不可能なブラジルに、彼女を送り出すことは、イスラム法を曲げることにもなろう。
したがって、この提案がブラジル大統領からなされたことは、イランにとっては有難迷惑なのではないか。ブラジルはイランの核燃料問題で、トルコと並んで、イランに協力的な立場を採ってきているだけに、イラン政府の困惑はなおさらであろう。
イスラム法の立場からすれば、イラン政府が出す結論はもちろん「ノ―」であろうが、全く持って迷惑な話であろう。この場合、イランの頑迷さが再度、世界中に誇張して伝えられることになるし、ニュースを拡大することにもなるからだ。
もし万が一にも、彼女のブラジルへの亡命が認められた場合、世界中のマスコミや出版社が、彼女に本を書くことを勧め、インタビューを申し込むことになろう。そんなことになったら、イランは大打撃を受けるだけであろう。
多少の反発を世界から買ったとしても、国内で処理する方が、より安全だと考えるのではないか。彼女に対する処刑は絞首刑ならば、仕方がないのだろうが、何とか石打ちの刑だけは避けてほしいものだ。それはあまりにも残酷過ぎるからだ。
日本の女性はこの石打ちの刑という処刑方法を、どれだけ知っているのだろうか。そして男性の犯した姦通罪に適用される罪が、どのようなものであるのかを知っているのだろうか。日本はその意味では、天国なのであろう。