中東和平は誰もが他人事の心境

2010年8月 1日

 アメリカのオバマ大統領は、パレスチナ自治政府のマハムード・アッバース議長に対し、イスラエルのネタニヤフ首相との直接対話を、早急に開始しろと迫っている。それを、ヨーロッパ諸国も、支持している。

 しかし、イスラエルとパレスチナの直接交渉からは、何も出てこないことを、誰もが分かっている。オバマ大統領にしてみれば、中東和平交渉がオバマ政権の下で、動いているという形を、作りたいだけであろう。

 イスラエルのペレス大統領が、パレスチナ自治政府の和平交渉チーフであるサエブ・エレカト氏に対し、元法相であったラモン氏を送り、「今の段階でネタニヤフ首相と直接交渉をしても、何も出てこない。時間の無駄だ。」と説得したという情報が流れた。もちろん、ペレス大統領は公式には、これを否定している。

 イスラエルのネタニヤフ首相にしてみれば、入植の凍結が9月26日で期限切れとなり、その後の凍結延長は、彼の内閣の存亡に関わる重大問題であり、とても無理だということから、何らかの変化を生み出したい、ということであろう。しかし、そうは言っても、ネタニヤフ首相がマハムード・アッバース議長と直接話し合っても、何の進展も無いことはほぼ確実であろう。

 そうなると、ネタニヤフ首相は9月26日をもって、入植の凍結を解除し、今ですら進められている西岸地区への、入植地建設工事を、大々的にやることを認めざるを得なくなる、ということであろう。

 ペレス大統領の87歳の誕生日に、ペレス大統領はムバーラク大統領と、パレスチナ問題を話し合うようだが、何も出てこないだろう。つまり、アメリカのオバマ大統領も、イスラエルのペレス大統領も、エジプトのムバーラク大統領も、何かをしている形が欲しいだけなのであろう。

 マハムード・アッバース議長も現段階では、どうしたらいいのか、全く方向が見えなくなっている。だからこそ、アラブ連盟会議に今後の方向の決定を、委ねたのであろう。そのアラブ連盟の決定は、直接交渉を認めるということだったが、その意図するところは、勝手にしろということではないのか。