エジプトでは大統領選挙前のインターネット戦争激化

2010年7月31日


 エジプトでは来年の大統領選挙の前哨戦とも言える、人気投票(支持投票)がインターネットを通じて、いま盛んに行われている。

 パソコンのインターネットを通じて行われている、支持のサイン集めと携帯電話を使っての、フェイス・ブックとがその中心になっているようだ。

 ムハンマド・エルバラダイ氏を支持するムスリム同胞団が、最初にこのキャンペーンを仕掛けたのだが、これはエジプトの若者の間で、爆発的な人気を呼んだようだ。

 このインターネットとフェイス・ブックを通じた、支持のサイン集めは瞬く間に、25万人以上のサインを集めた。主催者側のムスリム同胞団は、100万人まで集める、と大張り切りだ。

 これに後れを取ったガマール・ムバーラク氏は、巨大な看板やポスターで後追いながらも、宣伝活動を始めたが、やはりインターネットやフェイス・ブックでも、活動を展開し始めたようだ。

 このガマール・ムバーラク氏への、ネットを通じた支持サインは、初日で1600しか集まらなかったようだ。それは、ガマール・ムバーラク氏に対する支持が少ないというよりは、作戦面でムスリム同胞団が勝っている、ということであろう。

 ガマール・ムバーラク氏のポスターなどには「イスラムの満月」とか「夢が現実になることを望む」といったスローガンが書かれてあるということだが、少し古いフレーズなのではないか?

 もちろん、このインターネットを通じた、支持集めの結果が、直接大統領選挙に影響を与えるものでは無いことは、誰にも分かろう。ただ、ムハンマド・エルバラダイ氏に対する、支持サインが大量に集まった場合、大統領選挙で敗北しても、不正選挙であったというクレームをつける、有力な材料にはなろう。

 あるいは、大量の支持サインを集めることによって、ムハンマド・エルバラダイ氏は国際社会に、彼の大統領立候補への道が開かれるよう、支援を訴えるのかもしれない。(現状では彼は大統領選挙に、立候補できない)

 エジプトの大統領選挙は来年であり、まだ1年ほどあるが、現段階で既に相当熱くなっているということであろう。一時期はムバーラク大統領の、再立候補の噂も流れたが、どうやら彼は自分の次男に、道を明け渡す気になっているのではないか。

 今後注目されることは、ムスリム同胞団が世界的に知られる、ムハンマド・エルバラダイ氏を表看板に立てて、エジプトの現体制と世界に挑戦してくるということだ。ムスリム同胞団はエジプトでは非合法な組織であり、世界的にはイスラム原理主義に近い組織、という認識であろう。その挑戦をエジプトと世界は、どう受け止めるのか。そして、そのことを、主役であるムハンマド・エルバラダイ氏は、何処までムスリム同胞団の真意を、理解しているのか。