エジプトのカイロ市に、ムバーラク大統領と彼の二男ガマール・ムバーラクの拡大写真が貼られた、大看板が登場した。「信頼できる人物」というコメント付きであり、これは明らかに、ガマール氏を次期大統領に推薦する、という意味のものだ。
この大看板だけではなく、同種の写真のポスターが、カイロ(それ以外のところでも、出ているものと思われる)中の喫茶店や、レストランに張り出されようだ。それが及ぼす効果がどう出るのか、効果大とする見方と、その逆の結果を生む、という見方があろう。
世界の大都市の住民と同じように、エジプトの、特にカイロやアレキサンドリアといった大都市の市民は、相当高い政治意識を持っている。そうした市民の前に、このポスターが貼り出されるということは、逆効果につながる可能性も、否定できないのではないか。
レストランや喫茶店に張り出されたポスターについて、このニュースを報じたアルクドス・ル・アラビー新聞は、誰が貼ったのか分からないとしているが、店主の許可を得て、あるいは強要して貼らせたのであろうから、誰か分からないということはあるまい。それを敢えて、明らかにしていないだけであろう。
単純に考えれば、ガマール・ムバーラク氏の友人たちの、若手実業家のグループが、行ったものと思われる。
もちろん、別の受け止め方も出来よう。エジプト国民は国内政治の混乱を憂いており、ガマール・ムバーラク氏が次期大統領と決まれば、ほっとするかもしれない、という判断もなりたとうというものだ。
しかし、その通りに好結果を生むかどうかは、いまのところ分からない。少なくとも、ガド(明日=未来)党などは、激しくこれを非難している。場合によっては、政府とムバーラク大統領、そしてガマール・ムバーラク氏を非難する、格好の材料にされてしまうかもしれない、という不安はある。