エジプト政府は、4人のイランの国会議員が、エジプト経由でガザを訪問しようとし、ビザの発給を求めたとことに対し、4人にビザ発給拒否という対応を採った。
イランの国会議員に、何故ビザの発給が拒否されたのかについての、詳しい説明は無いが、おおよその見当はつこう。
イランの国会議員がガザに入ることは出来ば、当然、ハマースは彼らを大歓迎し、イランとガザのハマースとの、友好、協力、連帯が叫ばれよう。そのことは、ハマースを元気づけ、ハマースの主張の正当性を、強めることになろう。
エジプト政府とイラン政府との間は、決して良好な関係にあるわけではない。イランのシーア派イスラム教の、アラブ世界への影響力の浸透と拡大を、他のアラブ諸国と同様に、エジプト政府も恐れている国の一つだ。
不満を抱くアラブの大衆の多くは、イランの強硬な立場を支持しており、そのアラブ大衆が、イラン支持を強めるに至ったのは、2006年に起こった、レバノン戦争の結果による。レバノンのヘズブラによる、イスラエルに対する、精神的な戦争での勝利は、アラブ大衆の鬱積した感情を、鼓舞したのだ。
イランの国会議員や外交官が、アラブ諸国を自由に動き回れるということは、結果的に、彼らの宣伝工作に機会を与え、支えることになるわけであり、エジプト政府としては、認められなかったということであろう。
エジプト政府の現在の、中東和平に向けたスタンスは、マハムード・アッバース議長を代表とする、パレスチナ自治政府を中心とする、和平の模索であって、ハーリド・ミシャル氏をリーダーとする、ハマースの強硬路線を貫く、和平交渉のスタイルではないのだ。
今回、イランの国会議員がエジプトから、ビザを支給されなかった結果、彼らのガザ訪問は失敗したわけだが、このことについて、イラン政府は真っ向から、エジプト非難を始めるのではないか。当然、ガザのハマースもエジプトの対応を、非難することになろう。
そのことは、エジプトの内政にも影響していくであろうから、イランの国会議員たちは、あるいは、ガザ訪問に隠されていた、当初からの目的を、達成したのかもしれない。エジプト国内はいま、それだけ不安定だということだ。
エジプト政府はガザにつながる、ラファの回廊に設けられている、ゲートを閉鎖し続けてきたが、トルコの送ったガザ支援船事件を機に、開かざるを得なくなっていた。今回は、より広範に渡り、ガザ通過のためのビザの発給という、もう一つの扉を開かせるかもしれない。