キャメロン英首相のリップ・サービス?

2010年7月28日

 トルコの首都アンカラを訪問した、イギリスのキャメロン首相は、エルドアン首相との共同記者会見の席で、信じられないような、激しいイスラエル非難の演説を行っている。

 キャメロン首相は、パレスチナのガザ地区が刑務所(収容所=オープン・キャンプ)になっていると発言したのだ。そして「ガザには3年にも渡って、食料や医薬品、燃料、基礎生活物資が持ち込めない状態になってきている。」と非難した。キャメロン首相は「ガザ地区がこのような、収容所のような状態に置かれるべきではない。」とも語っている。

 同時に、トルコのEU加盟問題についても、トルコがこれまでNATO の一員として、欧州を防衛に寄与してきているし、アフガニスタンでも応分の活躍をしてきているのだから、EUはトルコの加盟を認めるべきであり、それが遅延することは、トルコにとって不満の鬱積となっている、とも語っている。

 加えて、イスラエルが軍の特殊部隊を送り、公海上でトルコからのガザへの支援船を急襲したことについても、許されるべきことではない、と非難した。

 さて、こうした発言内容はイスラエルにとって、極めて不利なものであるが、何故キャメロン首相がここまで言及したのか、という疑問がわいてくる。もちろん、トルコを訪問している中での発言であることから、少しリップ・サービスの部分もあるだろうが、それにしても非難の内容が、イスラエルにとって不快のレベルに、達するものではないか。

 このキャメロン首相の発言をあくまでも、訪問先国でのリップ・サービスとして受け止めるか、あるいは、イギリス国民の間に広がる、反ユダヤ、反イスラエル感情を意識したものなのか、じっくり考えてみる価値がありそうだ。

 ガザに対するイスラエル軍の連続的な攻撃は、ガザ戦争が終わった今日も、継続して行われている。そのことに加え、トルコの支援船フロテッラ号に対する、イスラエル軍特殊部隊の急襲があり、9人の犠牲者を生み出した。このこともキャメロン首相の、非難の対象になっている。

 イスラエル側はキャメロン首相の非難を受け、ガザはテロリストの巣窟であるから、オープン・キャンプだと、当然のことだという、開き直りの返答をしているが、それだけでは済まされないのではないか。

イギリスの首相が正面切って、イスラエルのガザ対応を非難したということは、ヨーロッパ各国にも影響を及ぼす、可能性があるのではないか。そうだとすれば、それはアメリカにも飛び火し、イスラエルやユダヤ人は苦しい立場に、追い込まれるかもしれない。