イスラエルの誤ったトルコ判断

2010年7月25日


イスラエルがどうもトルコの外交を、誤って判断しているようだ。あたかも、トルコはイスラム世界に戻って行き、イスラム原理主義のリーダー国になろうとしているかのような認識を、ネタニヤフ政権は抱き始めているのではないか。

確かに、トルコのエルドアン首相は青少年期にイスラム学校に通い、コーランを読み、イスラム法を学んではいる。しかし、そのことが彼をして、イスラム原理主義者だと判断することは間違いだ。

エルドアン首相はあくまでも、ガザの現状があまりにも非人道的であることから、何らかの解決を生み出さなければならない、と真剣に考えているのだ。パレスチナがファタハとハマースに二分し、西岸地区とガザ地区との往来が不自由な状況のなかでは、ガザの代表者も和平交渉に入れるべきだ、というのは正論であろう。

加えて、トルコはケマル・アタチュルクがユダヤ系であったことは、識者の間ではよく知られていることであり、トルコ共和国が成立した段階で。ギリシャのテッサロニキから、25000人ものユダヤ人が彼らの意思で、トルコに移住し、トルコ政府の要職に就いていた。

現在なお、トルコの軍部はユダヤ系の人たち多数が、幹部に加わっているし、財界人でも少なくない。もちろん学者や外交官のなかにも、ユダヤ系の人たちは多数含まれている。

つまり、エルドアン首相がたとえ、イスラム原理主義的な政策を採ろうとしても、それは不可能な構造に、トルコ政府は出来上がっているのだ。

イスラエル政府はトルコ政府を困らせようと、あらゆる方策を講じている、とトルコ側は見ている。ガザへの支援船フロテッラ号に対する、イスラエル・コマンド部隊の攻撃の5時間前には、トルコのPKK(クルド労働党)ゲリラが、イスケンデルンの港町で、海軍施設に対する攻撃を敢行し、トルコ軍兵士に死傷者が出ている。

トルコ側ではイスラエルがPKKに対し、軍事訓練を施し、資金と武器も供与していると判断している。もちろん、それにはそれなりの証拠、情報があるからであろう。

トルコ人の多くの友人たちが言うところによれば、イスラエルが今のような強硬姿勢を貫いていけば、最終的に世界で孤立し、彼らがいまガザのパレスチナ人たちにしていること以上に厳しい対応が、ユダヤ人全体に及ぶだろうということだ。

従って、トルコのエルドアン首相は何とかそのような状況が起こらないよう、イスラエルに対し、正しい方向に向かうよう、直言しているのだということのようだ。今こそネタニヤフ首相とイスラエル国民には、冷静な判断をして欲しいものだ。