なかなか決まらないイラクの新政府

2010年7月11日


 イラクで統一地方選挙が3月7日実施されて、既に4ヶ月の期間が経過している。しかし、いまだに新政府は誕生していない。それは、二人の大物政治家同士の対立によるものだ。一人は現首相のマリキー氏、そしてもう一人は元首相のアッラーウイ氏だ。

本来であれば、統一地方選挙で最大の当選者数を出した、アッラーウイ氏のイラーキーヤ党が組閣することになるのだが、イラク議会の過半数に満たなかったことから、組閣できないでいる。

その間には、マリキー首相の側と思われる、アッラーウイ派の当選議員暗殺が、何度か繰り返された。当選議員を殺してしまえば、結果的マリキー首相の政党が最大政党となり、組閣の権利を得るということであろうか。

しかし、そうした暗殺が行われても、マリキー首相がすんなり組閣できる環境には無い。その他の党がどちらに付くべきなのか、状況を見ているということのようだ。

これまで、マリキー首相とアッラーウイ氏が話し合いで、連合政府の結成に進むかに見えたが、双方ともに首相職を譲る気配が無かったことからか、連合政府は誕生していない。

アッラーウイ氏は首相職、国会議長職、大統領職をマリキー氏と分配して、連合政府の結成を考えているが、そうなると、クルドが大統領職を失う可能性があることから、黙ってはいない。

業を煮やしたイラクの宗教家たちが、両者を批判するという場面もあったが、その効果は出ていない。ハキーム師ばかりか、最大の宗教指導者シスターニ師までもが、苦言を呈している。

サドル師にいたっては、自分たちの仲間内で、誰が一番首相職に就くべきかを、投票したりもした。それは言ってみれば、人気投票のようなものであろう。そのこと自体が、首相選出に影響を与えるとは思えないが、混乱させる効果があることは、事実であろう。

アッラーウイ氏は8月までには、組閣が成功すると語っているが、それは再度、マリキー首相と要職の配分を交渉して、連合政府を成立させるのか、あるいは暗殺によるのか、全くわからない状態だ。

どの党がイラクの新政府を牛耳るのかをめぐって、混沌とするなかで、イラク国内では再度、テロが増加してきている。その犠牲者の数は当分の間、増え続けるのだろう。政治家の莫大な利益をめぐる争いが、力の無い庶民を犠牲にして、続いているということだ。