最近のマスコミの報道を見ていると、これまでとは違った傾向が見られる。それは、トルコに対する見方が、好意的になってきているということだ。これまでは、ヨーロッパ諸国ではトルコが毛嫌われていたし、ドイツなどではトルコ人に対する、放火殺人事件さえも起こっていた。
ヨーロッパ諸国のトルコに対する、対応が厳しかったのは、トルコがオスマン帝国の末裔であり、一時はウイーンの近くまで、攻め入られたという、歴史的な背景があろう。
加えて、第二次世界大戦後は、トルコからのドイツを始めとした、ヨーロッパ諸国への不法労働者の、流入問題があったろう。そして、彼らはトルコの文化そのものを、露骨に持ち込んでいたことも、問題であったろう。
キリスト教社会のなかに、イスラム教の習慣を持ち込まれることは、嫌悪の原因であったとも思われる。しかし、次第にヨーロッパに居住する、トルコ人たちが垢抜け、あまり宗教的習慣を、重視しなくなってきたことや、各国の現地語を話せるようになったことなどが、少しずつ誤解を氷解させているのかもしれない。
こうした時間のかかった変化が、トルコ人とヨーロッパ人双方から起こり、最近では、トルコが経済的に力を増してきたこともあり、ヨーロッパ人のトルコを見る目が、変わってきたのであろう。
ギリシャの経済危機では、トルコはエルドアン首相と経済代表団が、大挙してギリシャを訪問し、支援の手を差し伸べている。EU全体が経済支援で苦しんでいるときだけに、これは相当いいインパクトを、与えたものと思われる。
そうしたこともあってか、アメリカはヨーロッパ諸国に対して、トルコを受け入れるべきだと主張し始め、これに呼応するように、ドイツの外相がトルコを重視する旨の、発言をしている。加えて、NATO のトップもトルコに対して、EUはアン・フェアーだと言い始めている。
トルコに対するアメリカの重視は、戦略的なものであろう。イラク、アフガニスタン、イランへの対応、シリアやパレスチナ、イスラム諸国への対応の上で、トルコはアメリカにとって、力強い味方であろう。
ヨーロッパにとっては、フロテッラ号事件(トルコがガザに送った支援船で、イスラエル・コマンド部隊の攻撃を受け、トルコ人が犠牲になっている)や、その前のダボス会議以来(2009年)、ヨーロッパ諸国がイスラエルに対して言えなかったことを、トルコのエルドアン首相がはっきり言ってくれたことで、心の底では溜飲を下げているのではないだろうか。
もちろん、トルコの経済改善に向けたエネルギーは、ヨーロッパにとって脅威であると同時に、強い味方でもあるのではないか。トルコに対するこうしたアメリカやヨーロッパ諸国からの評価は、当分変わらないのではないだろうか。