ハーリド・サイードはエジプト革命のシンボルになるのか

2010年7月 3日


 アレキサンドリア市で起こった、青年殴打殺害事件が、その後、エジプト国内で大きな波紋を、呼び起こしているようだ。

警察官による暴力事件は、その後、青年がドラッグを飲んでいたために、自分で起こしたものだ、という説明がなされていたが、事態を重視し始めたためか、警察官の逮捕が行われた。

 しかし、それだけではすまなかったようだ。この問題は戒厳令にあるとして、ムバーラク大統領非難にまで、事態は進展しているようだ。残念ながら、現地にいないので、正確なことは分からないが、エジプト国内の状況は、これまでとは異なるのではないか。

 アルコドスルアラビー紙は、エジプト社会の変化を、エジプトの各マスコミの報道から推測している。アルコドスルアラビー紙の報じるところによれば、多くの新聞が政府に対して、批判的な記事を掲載しているということだ。そればかりか、これまで政府支持色の強かったマスコミにも、政府に対する批判が、出始めているということだ。

 もちろん、現段階で今後のエジプトの動向を、予測することは無理であろう。ただ、この青年の死は、不満が蓄積していたエジプトの大衆に、一つの連帯の核を、与えたことは事実であろう。

 イランの選挙不正を訴える大衆デモで、見物に行って死亡した女性が、その後、革命闘争の女性闘士のように祭り上げられたが、アレキサンドリアの青年の場合は、もっと鮮明な形で警察の暴力が訴えられている。

 ハンサムな青年の顔写真と、警察官の殴打でぐしゃぐしゃになった、彼の顔写真が並べられて印刷され、デモ参加者たちによって、掲げられているからだ。当然、事件が起こったアレキサンドリア市や、カイロ市にも、その二つの顔が印刷されたビラが出回り、張り出されているものと思われる。

 イラクでは停電で、担当大臣が辞任するということが、つい最近あったが、エジプトでも夏の暑さにもかかわらず、エアコンの無い家庭が多い。そのため、庶民は家の外に出て、夜をすごす場合が多い。それがどう爆発するか分からないのが、今のエジプトであろう。