イランと言えば、シーア派イスラムの総本山と言われる国だ。シーア派イスラム教徒のほとんどが、この国に住んでいる。それ以外のシーア派イスラム教徒はイラク、次いで湾岸の幾つかの国に主に居住している。
そのイランのシーア派イスラム神学法学のレベルは高く、学者のランクも幾つにも分けられている。今日では日本人の間でも知られている、アヤトラやアヤトラ・オズマなどがそれだ。
それにもかかわらず、イランではいま、イスラム法学から逸脱していると思われる、祈祷が大流行しているということだ。イスラムの祈祷師が悩みごとの相談を受けると、その悩みを紙に書かせ燃やし、祈祷をする(礼拝やお祈りであろう)と、たちまちにして悩みは解決するというのだ。
ある場合には、この祈祷師が洗面器などに水を汲ませ、それで御祈りをさせる場合もあるようだ。実際にその洗面器の水に、どのようなことをするのかは知らない。
結婚相談、家庭の悩みなど持ち込まれる相談は、多種多様のようだが、依頼者のほとんどは女性のようだ。その祈祷に対する謝礼はそれぞれで、モノや現金以外に、身体を提供する依頼者の女性もいるようだ。
イランの正式なイスラム学者の一部からは、そうした祈祷はイスラム法に沿っていない、と否定の通達が出されるのだが、あまり効果は出ていないようだ。祈祷師のところに悩みを持ち込む女性たちは、祈祷の効果があった、と信じているのだから無理もない。
イランではブログを調べると、幾つものサイトがこの手の相談を、受け付けているということだ。一部の祈祷師はその力をコーランのなかから学び取ったと主張しているようだが、それはイスラム法的には間違いだ。
しかし、イランの社会には特に女性の間で、多くの問題があり、こうした祈祷師の存在が、必要なのであろう。それなくしては、浮かばれない女性が多い、ということであろうか。だから、イラン政府はこの祈祷師に対し、厳しい対応を採っていないのであろう。
そう言えば以前、イランに行ったときに、ドーグとういうヨーグルト・ドリンクを飲んだことがある。政府主催のパーテイで出されたものだったが、同じテーブルについていたロシア人学者が「それはアルコールを含んでいる。」というのだ。
イスラム共和国のイランの、しかも公式なパーテイで、アルコールが出るわけはないと思って飲んでみたが、少し顔が暖かくなった。確実にアルコールが含まれていたのだ。
後で知ったのだが、このアルコールを含むヨーグルト・ドリンクは、一時期禁止になったそうだ。しかし、国民の要望で再度、市場で売られるようになったということだ。どこの国にも抜け穴はあるということであり、それは人間が生きていくうえでの、知恵なのかもしれない。「アッラーはげにお許したもう御方」という一節がコーランにはあった。