昨年のダボス会議で、トルコのエルドアン首相が、イスラエルのペレス大統領を非難した。次いで、ガザ住民への支援物資を運ぶ、フロテッラ号に対するイスラエル・コマンド部隊の襲撃事件、といった出来事が起こって以来、トルコとイスラエルとの関係は、悪化の一途をたどっているように見える。
トルコのクルド人組織PKKの襲撃事件が、トルコの南東部地域で頻発するようになって以来、これはイスラエルによるPKKへの働きかけによるものではないか、という見方が一般的になってきている。
イスラエルはこれまでも、現在でもPKKに対し、武器や資金を供与し、最近では、ゲリラ訓練指導も行った、という情報が飛び交っている。そこで在日のトルコ人青年と夕食を共にする機会があり、そのことを話題に取り上げ、彼の意見を聞いてみることにした。
彼の意見が実にユニークだったので、この欄でご紹介することにした。彼はイスラエルの働きかけによって、PKKがテロ活動を活発化したというのは、間違いではないかと語り、イスラエルよりもドイツの関与の可能性が高い、と言っていた。
彼曰く、EUの中心国であるドイツにとって、トルコの経済状況がよくなり、国力が増すことは、決して好都合なことではないというのだ。ドイツは第一次世界大戦時、トルコと同盟関係にあったことから、トルコ・ドイツ関係は今でも良好なのではないか、と考えがちだが、そうではないということだ。
ドイツには多数のトルコ人移民が居住しており、トルコが国力を上げていけば、彼らとの協力関係も強化され、ドイツ国内を始めEU域内でも、トルコの影響力が増すというのだ。
彼は続けて、トルコの大手マスコミである、ドアン・グループのスポンサーは、ドイツの企業だとも語っていた。ドアン・グループは現在、トルコの与党AKPに対し、敵対的な立場に立って報道している。そのため、トルコの大スキャンダル事件であるエルゲネコン問題解決でも、与党に対しネガテブ・キャンペーンを展開してきているということだ。
彼の意見を鵜呑みにするつもりは無いが、実にユニークな推測ではないか。日本人の中東専門家やトルコ専門家に、このことを考えて見た人は、一人もいないのではないか。