サウジアラビアのアブドッラー国王と、アメリカのオバマ大統領が会談している。当然、テーマはアフガニスタン問題であり、イラン問題であり、パレスチナ問題ということになる。
なかでも、イラン問題はサウジアラビアにとって、最も重要な課題であったろう。それは、イランが核兵器を持つに至るか否かが、サウジアラビアにとっては喫緊の大問題だからだ。
イランが核兵器を持つようなことになったら、サウジアラビアはイランによって、常に恫喝されることになろうし、そればかりか、サウジアラビア国内のシーア派が勢いづいて、活発な分離独立運動を始めることにもなりかねない。
もし、サウジアラビアのシーア派が分離独立するようなことになれば、サウジアラビアはほとんどの産油地帯を、失うことになるのだ。したがって、何としてもそのような事態は、避けなければなるまい。
加えて、イランが核兵器を持つに至れば、イランの中東地域における存在は大きくなり、多くの中東の住民が、イランの意向に沿うようにもなろう。そのことは、サウジアラビアの王制が不安定化し、やがては打倒されることにも、繋がりうるのだ。
アメリカは今回、イランの核開発に対し、強度の経済制裁を決議したが、サウジアラビアに言わせれば、その程度のことではイランに何の影響も、与えまいということになる。
そうしたなかで、イランに対する経済制裁は単に、イランの核開発に時間を与えるだけで、何の抑止効果も無いと判断しているのは、アメリカのCIAであり、イスラエルということにある。イスラエルはアメリカの顔を立てて、イランに対する空爆を差し控えているようだが、やがて限界点が訪れよう。
つまり、サウジアラビア王家の生存がかかっている、イラン問題への対処で、意外なことにイスラエルが、最も似通った判断をしているということだ。そうであるとすれば、サウジアラビア政府が秘密裏に、イスラエルとの間でイラン対応の、協力体制を組んだとしても、不思議ではあるまい。
サウジアラビアの西部の軍事基地タブークに、イスラエルが武器を持ち込んだという情報や、サウジアラビアがイスラエルの爆撃機の、領空の通過を認めたという話は、こうして考えてみると、空絵事とは限らないのかもしれない。
サウジアラビア政府はそれだけ、イランの核開発を真剣に捉え、対応を考えているということであろう。