イランが独自でウラン濃縮に成功という発表

2010年6月24日

 これまで国連やアメリカの主導の下、イランのウラニューム濃縮が、大きな問題となってきた。イランが所有する5パーセントのものを、20パーセントの濃度まで高めることは、核兵器の製造につながるとして、世界中から警戒されてきていた。

 その結果、アメリカの主導でイランに対する、新たな制裁が決められた。しかし、それはイランにとってあまり効果的な制裁ではない、というのがおおよその判断であった。

 それは、国連常任理事国のうちロシアと中国が、イランとの間に特別な利害関係を持っているために、アメリカが両国の賛成を取り付けるには、ある種の妥協が必要とされたからだった。結果的に、新たな制裁はザルになるだろう、と専門家諸氏が判断したわけだ。

 この結果を嘲笑ったのはイランだった。そして、イランのイラン原子エネルギー協会委員長のアリー・アクバル・サーレヒー氏は、イランが独自で17キロの20パーセント濃縮ウラニュームを作り出したと発表した。

 しかも、同氏は「イランは月5キロのペースで、20パーセント濃縮ウラニュームを製造できるに至った。」とも語っている。

 これはイスラエルにとって脅威であろう。イランのアハマド・ネジャド大統領は、イスラエルの国が滅びることを、再三に渡って繰り返して、語ってきているからだ。イランが核兵器を持つった段階で、一番最初にそれが使われるのは、イスラエルだと同国政府と国民は信じているからだ。

 そのため、日本人が考えている何倍もの確率で、イスラエルはイラン攻撃を検討しているようだ。サウジアラビア上空通過によるイラン空爆、あるいはグルジア、アゼルバイジャン経由の空爆など、幾つもの予測が出ていることを、見逃すわけにはいくまい。

 それでは何故イラン政府はこうまでも、これ見よがしにイスラエルを不安に貶めるような、発表をするのだろうか。その裏には、イランの体制と国民の間に、溝が生じているからではないか。イランは核兵器を造ることは否定しているものの、それを考えさせることによって、強いイランのイメージをイラン国民に抱かせ、体制支持を取り付けようとしているのではないか。

 もちろん、それはサウジアラビアを始めとした、湾岸諸国に対する圧力にもなろう。中東地域にあって、イランの強気の姿勢は、大衆を引きつけもしよう。しかし、実際にはイランのこうした動きは、イスラエルを攻撃することを、全く前提にしていないのではないかと思われる。

 そうであるとすれば、イランのウラニューム濃縮は、まさに危険な火遊びではないのか。