6月13日から21日にかけて、トルコを訪問してきた。目的はトルコで二つの国際会議に出席にし、3つの講演をするためだった。
第一の会議は、トルコの首相府の付属研究機関である、SETAの主催で開かた、トルコ・アラブ・ダイアローグで、トルコ人とアラブ人の参加に限定されていた。
しかし、私個人と笹川平和財団とが、トルコとの関係が深いこともあり、唯一、アラブ人でもトルコ人でもない私が、会議に参加することが出来た。(もちろん、会議はトルコ語とアラビア語だけで進められ、英語の通訳は付かなかった。)
この会議には参加前から、ある種の期待が私にはあった。アラブが現段階でどうトルコを捉えており、トルコがアラブをどう見ているか、ということだった。それだけトルコの最近の、アラブ外交は活発だからだ。
アラブの発表者は、昨年のダボス会議でエルドアン首相が、イスラエルのペレス大統領に対し、厳しくガザの戦争を非難したことで、アラブのトルコを見る目が、一変したと語っていた。
続くガザ支援船派遣でも、トルコはアラブの大衆から、強い支持を受けるようになったとも語っていた。ガザへの支援船は、結果的にトルコ人など9人が犠牲となったが、この支援船問題で世界のイスラエルを見る目は大きく変化し、パレスチナ問題に対し、公正な見方をする欧米人が増えたことも事実だ。
アラブの発表者はイギリスの宣伝活動で、アラブにはトルコ(オスマン・トルコ帝国)に対する間違ったイメージを抱いていたが、今ではその間違いに、気づき始めているとも語っていた。
アラブの発表者からは、マスコミ、映画、教育の面での、トルコとの交流の促進と、正しい教育が必要だという意見も出た。アラブではこれまで、トルコの映画や小説などに対するアレルギーがあったし、教科書でもトルコについては、決して好意的には書かれていなかった。
トルコの発表者は、冷戦構造の崩壊で世界が大きな変化を示し、トルコの立場もこれまでとは大きく変わったと述べた。アラブの参加者からも出たのだが、トルコが外交面でアラブ問題なかでもパレスチナ問題で、アメリカとの仲介を果たしてくれることへの期待が語られた。
また、イランの台頭についてアラブ参加者の多数から、トルコがイランに対する抑止力として、外交・政治・軍事的に役割を果たすことへの、期待が語られもした。確かに、トルコは最近イランと欧米の橋渡しをするとともに、イランに対しても、厳しい意見を述べている。
この会議は、今後のアラブとトルコとの関係を予測していく上で、極めて重要な示唆に富んだものであった。