国連安保理イラン核制裁各国の損得勘定

2010年6月12日

 イランンが核兵器を製造するのではないかという疑念が元で、進められていたイランに対する制裁が、国連安保理で決議された。このことが今後、関係各国にどのような影響を、与えていくのだろうか。

 まず、問題の当事者であるアメリカとイランだが、アメリカは一応制裁決議を通過させたという意味で勝者であろう。しかし、その実態はザルであり、実効性のあるものではないようだ。つまり、アメリカは国際社会のなかで、かろうじて面子を保つことが出来た、ということではないか。

 他方、イランはその裏返しであり、制裁を決議されたが、実際にそのことによって、大きなダメージを受けることには、ならないようだ。経済的な問題はこれまでもあったわけであり、今回の決議が出たからといって、特に悪くなるということではない。

 当初、棄権あるいは反対に回るのではないか、と思われていたロシアと中国は、結果的に、アメリカとの取引で、制裁に賛成するが、ロシア・中国のイランとの関係を、大きく左右されるものにはしない、ということであったろう・

 ロシアはイランとの間で、S-300の供与について実施しないと言っているが、実際には制裁前の合意については、別枠であるということも言い出されそうだ。加えて、ロシアからイランへの通常兵器輸出は、あまり影響を受けないのではないか。したがって、ロシアが今回の制裁で、損失を蒙ることにはならないだろう。

 中国についても同様であり、今回の制裁の主題はイランへの兵器輸出であり、核開発であったことから、中国がイランに求める石油・ガスについては、ほとんど影響は出まい。したがって、中国はアメリカに貸しを作り、イランとはこれまで同様の関係を、維持していけるということであろう。

中国は制裁に賛成した後、イランに対するサービスを忘れていなかった。イランとは今後も話し合いを継続し、核問題の平和的な解決を、図るべきだと語っている。中国の国連制裁への対応は、まさに一石二鳥ということではないのか。

そして、今回のイラン制裁決議をめぐって、最も得をしたと思われるのは、トルコであろう。トルコはアメリカの説得にもかかわらず、決議に反対票を投じた。しかし、だからといってアメリカが、トルコに対して報復をする気配は全く無い。それはアメリカの中東政策上、トルコが大きな価値を持っているためであろう。

トルコが反対票投じた結果、イランは当然のことながらトルコに感謝し、今後も両国の経済関係は進展していこう。トルコの専門家たちの分析では、制裁の主題が兵器であり、革命防衛隊に対する締め付けであったことから、通常の物品の輸出には、何の影響も及ぼさないということになる。単に影響があるとすれば、貿易上の銀行決済だけだということだが、それは何とでもなることであろう。

加えて、今回のトルコの取ったイラン制裁への反対の立場は、アラブ諸国との関係にも好影響を与えており、トルコは益々中東地域における、主要な国家になっていく道を、開いたのではないか。それは、実はアメリカの望むところでもあろう。