イスラエルのコマンドによる、突然のガザ支援船フロテッラ号襲撃事件は、公式数字で9人の死者と、50人にも及ぶ負傷者を出したことから、世界中の話題となり、イスラエルが非難されている。
アラブ諸国やイスラム諸国はもとより、アメリカやヨーロッパ諸国からですらも、イスラエル非難の声が上がっている。この結果、イスラエルは世界的に孤立した状態に陥り、今後のイスラエル政府の対応次第では、完全に孤立した状況にも、陥りかねない。
そうしたことから、イスラエル国内では、ネタニヤフ首相とバラク国防相、そして軍部に対する、非難が起こっている。野党のカデマ党ツビ・リブニ女史は、その急先鋒に立っている。彼女の政府批判には反論もあり「今こそイスラエル国民は連帯し、この難局を乗り切るべきだ。」という意見もある。
イスラエルは中東地域唯一の友好国である、トルコとの関係を取り返しのつかない状態に、してしまったようだ。トルコ側はイスラエルが正式に謝罪し、補償しなければ、今後の両国の関係は、修復できないと息巻いている。
トルコの新聞が、もしイスラエルとトルコとの関係が断絶した場合、両国はどうなるのか、という予測記事を掲載したが、その中では、トルコは損害を被ることはないが、イスラエルにとっては、大打撃であろうと記されていた。
トルコ側は今回の事件で、イスラエルとの関係が断絶されれば、国防産業が活性化し、観光業産業も活性化するとみている。確かに、アラブ諸国や中央アジアのイスラム諸国からの、観光客は増えようし、投資もまた増えることが、予測される。
既にこれまであった、アラブ諸国のトルコ・アレルギーは、今回の事件を機に、一気に解消したようにも見える。
他方、イスラエルはトルコとの関係が断絶された場合、経済的なダメージを受け、国際戦略上も大きなマイナスに、直面するだろうということだ。すでに、トルコはイスラエルとの、合同軍事演習を拒否している。イスラエル空軍はトルコ領空での、訓練が不可能となろう。
イスラエルがこの窮地から抜け出すには、首相をはじめ大半の閣僚が、辞任する必要があるのかもしれない。また、アメリカのバイデン副大統領とエジプトのムバーラク大統領が協議したように、今後のガザに対する対応を、大幅に修正する必要もあろう。
加えて、トルコが主張するように、ガザのハマース組織をテロ組織としてではなく、政治組織として認識を改める必要もあろう。そうなれば、今後イスラエルでは、ツビ・リブニ女史や、ペレス大統領といった、比較的穏健派の政治家たちが、前面に出てくることになるのではないか。それなしに、イスラエルはこの難局から、抜け出すことは出来まい。