クリントンとは意味合いの違うパウエル将軍のイラン観

2010年6月 1日

 ブッシュ政権で国務長官を務め、一時期は次期大統領の声もかかったパウエル前国務長官が、イランの核開発について、意味深長な発言をしている。

 彼はABCテレビとのインタビューの中で、「イランは何千年ものあいだ、周辺諸国と取引をしてきた経験がある国だ。彼らは非常に賢く、制裁でどのような影響を受けるかを、よく理解している。彼らはすでに、対応策を検討し、計画を立て、対応策を立てているだろう。」と語っている。

 パウエル将軍の意見は正しかろう。イランは制裁を受けたとしても、核開発を止めることはありえまい。まさに、国家のメンツがかかった、ナショナル・プロジェクトだからだ。

 もちろん、制裁が行われればガソリン不足や、原油の輸出上の問題などが起ころうが、ガソリンも原油も、売り手がおり買い手がいれば、量的に減ったとしてもそれは続こう。

 パウエル将軍は「我々はイランの核開発を、受け入れざるを得なくなるのではないか。もちろん、それはエネルギー源としての核開発と、医療用に厳しく制限されはするだろうが。」とも語っている。

 クリントン国務長官は、イランに対する制裁を何としてでも通過させ、一日でも早くそれを実施したい考えのようだが、パウエル将軍の場合は、クリントン国務長官とは異なり、イランの核開発を厳しく制限することで、安全を確保しようという考えだ。

 イスラエルがイランの核について、非難すればするほど、イスラエルが所有していると思われる核兵器と、現存する核施設について、厳しい反応が世界から起こっている。 

つまり、クリントン国務長官やキッシンジャー博士のように、何が何でもイランの核開発を阻止したいというだけでは、イスラエルの安全は保障し難いということではないか。

アメリカの元高官の口から、イランに対する、こうした新たな妥協点が示されたことは、オバマ大統領の頭の中にも、イランの核開発に関する、妥協的な落とし処が、見え隠れしているということであろう。

昨日、笹川平和財団が開催した、イランのモッタキ外相の講演で、質問に対しモッタキ外相は、自信ありげに、「トルコ・ブラジルの仲介は、アメリカも知っていたし、日本も知っていたのだから、実現する。」という見通しを口にしていた。

あるいは、国際社会のなかで、激しいイランの核開発非難が出ているのは、世界ではなくて、実際にはイスラエルだけなのかもしれない。それがマスコミを通じて、異常なまでに膨らまされて、報じられているのかもしれない。