パレスチナ自治政府携帯電話のSIMカードを禁止

2010年5月 1日

 携帯電話の普及率は世界中で高くなっている。電話線を張らずに衛星を経由して、電波を送るシステムであることから、インフラに費用がかからず途上国でも容易に、電話の普及を図ることが出来るのだ。

 しかも、携帯電話は小型化し、軽量になり、しかも安価になっているため、購入が容易になったことも、普及率が上がった一因であろう。東京だけではなく、携帯電話は何時の間にか、恋人以上に見つめられ、握られている光景が、世界中で一般化している。

 通勤時、ほかの物は忘れることがあっても、携帯電話だけは忘れない、という人が多いのではないだろうか。私の友人などはIPHONEを買って以来、何時も撫で回しているので、彼はIPHONEと結婚したとまで言われるほどだ。

 その携帯電話が、パレスチナの占領地でも普及している。他の国の場合と同じで、普及率が高くなったのは、電話機が安価であることにあわせ、パレスチナの場合には、外国に出稼ぎに行っている家族がいたり、パレスチナ占領地に戻れなくなったりしているケースが多いことも、普及率を高めた原因であろう。

 しかし、ヨルダン川西岸地区で普及している、パレスチナ自治政府の携帯電話サービスは、西岸地区だけのものであり、外国にはかからないようになっている。パレスチナ政府はその原因について、イスラエル側が電波の利用を許可してくれないからだ、と説明しているようだ。

 しかし、これではパレスチナ人のニーズに応えられない。そこでパレスチナ人はイスラエルの会社が販売している、SIMカード(3G対応)を購入し外国との連絡を取っている。

 従って、携帯電話サービスの収入は全てといっていいほど、イスラエルの会社に入り、パレスチナの会社には入らなくなっているのだ。そこで、パレスチナ自治政府は、SIM カードの購入を禁止することを決めた。

 加えて、パレスチナ自治政府はイスラエルの入植地で働くことも禁止した。結果的に、入植地で働く21000人のパレスチナ人は、職を失わざるを得なくなった。確かに、入植地の建設にパレスチナ人が従事し、入植地でパレスチナ人が働くことは、パレスチナの独立にはマイナスであろう。

 しかし、現実にはパレスチナ人には、入植地以外に働く場所がないのだ。つまり、入植地に関連した仕事をしなくては、家族を養っていけないのだ。これらのパレスチナ自治政府の新たな決定は、パレスチナ人の間に不満を募らせていくことになろう。それがどの程度まで膨らむのか。そしてそれは暴発するのか。注目する必要がありそうだ。