日本時間の5月29日、国連で開催された核拡散防止条約再検討会議は、核なき世界の実現に向けて、64項目の行動計画を最終文書としてまとめた。この合意に加え、国連の最終合意文書には、2012年に中東非核地帯実現に向けた会議を、開催することも決めた。
この合意文書は、今回の会議に加え2012年の会議も、イスラエルが焦点となるものであったため、イスラエルは強く反発している。イスラエルは2012年の中東非核地帯構想会議には、参加しないと拒否の立場を明確に示した。
イスラエルが今回の合意文書にクレームをつけたのは、イランの核開発に関する言及が、無かったことに起因する。国連の決議は実質、イスラエルを焦点にしたものであり、イスラエルにNPT加盟を、求める内容のものだった。
しかし、イスラエルはNPT に加盟していないことから、合意内容には縛られないと主張している。
アメリカはイランの核について追求すれば、おのずからイスラエルの核をよけて通ることは出来ず、今回のような形の合意を、飲まざるを得ないこととなった。このことから、イスラエルは「アメリカはイスラエルを犠牲にした」とアメリカ批判まで始めているが、イスラエルがかたくなになればなるほど、国際的に孤立していくことになろう。
加えて、今件6月に開催予定のIAEA会議でも、イスラエルの核問題が取り上げられそうだ。イスラエルは核兵器の保有について、これまで肯定も否定もしない立場を取り続けてきたが、どうやらその立場を貫き通すことは、難しくなっていきそうだ。
イスラエルの抵抗が強ければ強いほど、イランの核問題は影を薄くしていくことになるのではないか。少なくとも、いまの段階ではイランは、核兵器を保有していないわけだし、イランの最高権威であるハメネイ師は、核兵器を保持しない、と明確に否定している。
こうなるとトルコとブラジルが努力してきた、イランの核開発をめぐる問題が、軟着陸する可能性が出てきたということではないのか。アメリカは必死で制裁を決議し、それを早急に実施したいと考えているようだが、国際的な反発が強まるのではないか。
その場合、懸念されることは、イスラエルの軍事力行使だ。しかし、それもイスラエルにとって、極めてリスキーな選択であろう。何事も常識の範囲に収まるのが、一番好結果を生むのではないか。それを日本には提案して欲しいものだ。
今回の国連決議は結果的に、トルコとブラジルに対する、国際的な評価を高めたのではないか。イランはつかの間であれ、ホット胸をなでおろしていることであろう。