アメリカはどうしてもイランを制裁したい

2010年5月28日

 トルコとブラジルが、イランとアメリカの仲介役を果たし、イランに対する国連制裁を、止める努力を続けてきた。結果的に、イランは低濃度のウラニュームと、中濃度のウラニュームとの交換に、応じることを正式に発表した。

 交換場所はトルコとされ、イランの核開発をめぐる問題は、一見落着したかに思われた。しかし、ロシアが国連制裁に賛成する姿勢を示し始めたことから、事態は急変し始めた。

 イランのアハマド・ネジャド大統領はロシアに噛み付き、ロシアは中東での権益を失いかねないと警告した。その後、ロシアのラブロフ外相はイランが国連の要求に応じて、核問題の解決を進めていくのであれば、制裁に参加しない可能性も、あることを口にした。

 他方、アメリカ側ではキッシンジャー博士が、制裁は時間の無駄だとし、実質的には、軍事攻撃をするべきだという内容の、発言をしている。そして、クリントン国務長官も、制裁が絶対に必要であることを語り、トルコやブラジルの仲介は意味をなさない、という立場を示している。彼女はブラジルに対し、アメリカとの信頼関係を失うことの、危険さを警告してもいる。

 それは間接的であるにしろ、トルコにも向けられたものだ、と理解すべきであろう。

 クリントン国務長官のこのような強硬な立場は、イランが現在交換しようと主張している、何倍もの低濃度ウラニュームを所持しているはずだ、という推測が元になっているようだ。

 今回、トルコとブラジルの仲介により、イランに対する新たな制裁が可決され、実施されることにならなければ、やがてイランは核兵器保有国になってしまう、という焦りからであろう。

 したがって、クリントン国務長官は、どんなことがあっても、制裁が可決されるように努力をしよう。それは、制裁を妨害したり、制裁に反対する国には、アメリカによって、何らかの制裁、脅し行われうるということであろう。

 日本は国内問題に忙殺されて、ほとんどこの問題に関心を持っていないが、各国はこのイランの核問題で、何処に位置する方がいいのかを、いま真剣に考えているところであろう。

 来る531日には、笹川平和財団が主催し、ホテル・オークラのオーク・ルームで、イランのモッタキ外相の講演会が開催される。笹川平和財団の働きかけにもよるが、内外の報道陣が高い関心を寄せ、この講演会に大挙して、参加する予定だ。

 会場外にはテレビが設置され、ランチョンに参加できない人にも、モッタキ外相の講演が見聞きできるよう準備される。多数のご参加を期待したい。