イランの核問題を、ある意味では必要以上に、アメリカとイスラエルが追求してきた結果、意外な動きが世界中で、起こり始めている。イランもさることながら、イスラエルの核に関する注目が、集まり始めたのだ。
スラエルはだいぶ前から、150発あるいは200発の核弾頭を所有している、と見られてきた。しかし、イスラエルはNPTに加盟していないことと、アメリカが国連の場でイスラエル非難が起こるたびに、拒否権を発動して来たために、国際的な査察を受けずに今日に至っている。
今回のイランの核開発をめぐる国連の会議では、イランに対する査察をよりいっそう強化し、実施することに加え、アメリカはイランがそれに従わない場合は、厳しい制裁を加えることを提案した。イスラエルはそのような制裁は手ぬるいとし、一日も早くイランの核施設を攻撃し破壊すべきだと主張している。
しかし、多くの参加国、なかでも中東の参加諸国は、イランと同様にイスラエルの核に関する査察を、実施すべきだと主張し、中東地域を核のない地域にすべきだと強く主張した。中東地域を非核地域にする合意は、1995年ごろに成立していたが、イスラエルはこれを無視し続けてきた。
今回の国連の会議を前後し、イスラエルのかたくなな核問題に対する態度と、ガザのパレスチナ人逆殺が重なり(2008年から2009年にかけて行われたガザ戦争)、イスラエルの国際的イメージは悪化している。最近になって、ヨーロッパ諸国の多くは、反ユダヤ色を強めているし、アメリカのユダヤ人ですら、こうした状況が続けばやがては、反ユダヤの機運がアメリカ国内でも、拡大することを懸念し始めている。
イスラエルのOECD加盟が、ここに来て取り沙汰され始めたが、それは各種の国際組織の場で、イスラエルを核問題で抑え込もう、とする動きかもしれない。一概に経済的な協力体制の拡大とは、受け止めるべきではなかろう。
IAEAの天野事務局長も、当初はイランに対して厳し過ぎる、ダブル・スタンダードだと第三世界の国々から非難されていたが、最近の彼の立場を見ていると、次第にイスラエルに対しても、厳しいものになってきているのではないか。
世界のこうしたイスラエルに対する、締め付けとも思える対応の変化のなかで、イスラエル国内からも核問題で、批判的な意見が出始めている。イスラエルの核施設に勤務した経験のある人物が、これ以上イスラエルが核に関して、秘密を守り続けることは得策ではない、と言い出したのだ。
過去40年間は、イスラエルには核兵器が有るとも無いとも言わず、ただひたすら秘密にしてきたことが、イスラエルの国防上プラスであったが、これ以上は国際非難を避ける意味でも、IAEAの査察を受けいれるべきだと言ったのだ。
彼の意見はまさに正論であろう。ネタニヤフ首相がこうした国際的潮流を正確に読み対応していく、柔軟性を持っていなければ、イスラエルは近い将来、自滅の道をたどり始める危険性があろう。