CNNのネットが伝えたニュースに、アフガニスタンに住み続ける、最後のユダヤ人の話しがあった。それによると、アフガニスタンには800年続いた、ユダヤ人コミュニティが存在したということだ。
過去形で書いたのは、現在アフガニスタンにはコミュニティといえるだけの、ユダヤ人が居住していないからだ。19世紀の一時期までは、4万人ものユダヤ人がアフガニスタン国内に、居住していたということだ。
しかし、その後、反ユダヤの機運が70年に起こり、アフガニスタンからの移住が始まり、1948年にイスラエルが建国されると、多くのユダヤ人たちがアフガニスタンから、出て行ってしまったということだ。
ザブロン・シミントフさんは奥さんや娘さんが、イスラエルに移住したにもかかわらず、アフガニスタンに住み続けている。彼自身も12年前に、イスラエルを訪問しており、家族も彼がイスラエルに、移住することを勧めるのだが、頑なにそれを断っているということだ。
彼の娘さんはいまでは、14歳と16歳に成長しているのだが、12年前に会って以来、一度も会っていないということだ。
それではアフガニスタンが彼にとって、住みやすい場所かというと、必ずしもそうではないようだ。彼はタリバン・グループによって逮捕され、4度も刑務所に入れられたということだ。しかも、その刑務所では鞭打ちの刑を、受けているということだ。
さて、彼が通うシナゴーグ(ユダヤ教の教会)は表通りの裏にあり、粗末なダビデの星のマークと古びた椅子、それに天井で緩慢に回る、扇風機があるだけだということだ。
アフガニスタン人もアフガニスタンに住むユダヤ人も、皆同じように苦労をしてきたのだ、という意識があるからであろう、そのことに加えて、この古びたシナゴーグを守り続けたい、というのが彼の頑なな心を、支えているのではないだろうか。近代的なイスラエルを見ているにもかかわらず、彼にはイスラエルもアフガニスタンも、変わりは無いということのようだ。
実はそれが、ユダヤ教徒の真の姿ではないのかと思えた。あるいは、信仰を持つ人の真の姿のように思えてならなかった。世界中のユダヤ教徒が、このCNNのニュースを読んでいることだろう。
しかし、このザブロン・シミントフさんに、安易に援助の手などさし伸べて欲しくなと思う。彼にとって最高の価値は、その古びたシナゴーグで、死ぬまで祈りをささげ続けることなのだから。