リビアは不思議な国だ。1969年のカダフィ大佐による革命以来、この国は特異なシステムの下に運営されてきた。カダフィ大佐を革命のリーダー、大統領あるいは革命の推進者 という地位に置いてきた。
リビアはカダフィ大佐の唱える第三理論により 国民が全てを自身で決定する 直接民主主義体制をとってきた。各地で国民集会を開き そこで地域の問題を決め その地域の代表が全国大会に参加して 国家の方針を決めてきた。
もちろん、実態はカダフィ大佐の独自の考えを 国民集会が国民の意思として、決定するというものであり、瑣末な問題は別だが、重要な決定はカダフィ大佐の意志によって、決められてきていた。
こうしたシステムが40年続いた結果、リビア国民は不満を述べはするが、積極的に国家を建設するようにはならなかった。カダフィ大佐の気まぐれな政策や決定が、結果的に外国企業の進出を抑え、リビア国内では生産やビジネス経験の蓄積が遅れた。
カダフィ大佐の息子たちは、いずれも独裁者の子息として、ワンマンな言動が目立ち、外国に対して好印象を与えてはいない。その中で唯一常識的な思考が可能なのは、サイフルイスラ-ムであろう。
サイフルイスラ-ムとカダフィ大佐との間では、これまで何度と無く意見の対立があったが、結果的にカダフィ大佐は、彼を支持するしか無いようだ。サイフルイスラームはこれまで、リビアが生み出した国際的なトラブルを、幾つも解決してきている。
そのサイフルイスラームが昨年、実質的なリビアの次期リーダーの地位に推挙された。その裏には、カダフィ大佐の意向があったことは明らかであり、カダフィ大佐が全国人民大会に対し、サイフルイスラームを指導的な、正式な地位につけるよう働きかけたからだ。
そしていま、サイフルイスラームはリビアに、憲法を持ち込もうと言い始めた。憲法法律無しには、全てがその時々の社会の雰囲気で、動かされてしまうからだ。法律が明確でない場合には、外国企業のリビア進出中でも、生産企業の進出が進まない。
結果的に、リビアには生産設備が出来ず、生産設備を自前で導入しても、なかなかうまく運用できないでいる。国際ビジネス進め方についても、外国企業から学ぶ機会が無いのだ。
今回のサイフルイスラームの提案が、カダフィ大佐とリビア国民に受け入れられ実現することを望むが、カダフィと革命を起こした旧首脳部と、その子息たちが、サイフルイスラームの改革の邪魔となろう。それをどう押さえていけるかが、リビアとサイフルイスラームの将来を決めよう。