過去数ヶ月の間に、サウジアラビアにとって不名誉な、幾つものニュースが伝えられてきている。そこで今回は、そのうちの一つを紹介することにする。
サウジアラビアでは未婚既婚を問わず、多くの女性が家から飛び出しているというのだ。分かりやすくいえば、家出をしているということだ。その原因は家庭内暴力が主なようだが、全くの見ず知らずの男性と結婚させられ、その生活になじめないために、嫁ぎ先の家から逃亡する、という例もあるようだ。
一般的には友人知人宅親戚の家に一時期隠れ住み、問題の解決と彼女の安全が保証された後に、元の鞘に収まる例もあるようだ。つまり、自宅内や嫁ぎ先の暴力や関係改善に、仲介者が入って解決を見ることが出来るという例だが、これはハッピーな例でしかない。
現実には家庭内暴力について警察に訴えても、警察は相手に連絡してあげるというだけで、何も解決してくれないということだ。そうなると、耐えられない女性は、家を飛び出すことになるのだ。
そうなった場合、彼女たちは実家にも帰れなくなるが(自宅から逃亡した場合も)、その後の彼女たちの人生は、悲惨なものになるようだ。売春婦になったり、麻薬の密売者になるケースが多いということだ。
最近ではこうした女性たちのために、人権委員会などが設立した、駆け込み寺(家出女性のためのためのシェルター)が設けられ、その存在が女性たちの間で、知られるようになった。
その結果、以前は月に一人程度だった救援を求める女性が、最近では10人以上にも及ぶということだ。実は年間にして公式ではないが、850人から3000人程度の女性が、逃亡しているというデータがあるということだ。
女性の家出には、幾つもの理由があるようで、家庭内暴力や女性に対する保護の不十分さ、経済的困窮、社会的問題、家庭内不和など、きりが無いようだ。
サウジアラビアでは女性が家から一人で外出すること自体が、極めて危険なことだ。ムタッワと呼ばれる宗教警察が、彼女たちを逮捕し暴力行為に及んだり、ふしだらな女性というレッテルを貼るのだ。
しかし、時代の変化がサウジアラビアにも、及んできたのであろうか。テレビやインターネットを通じて、外国の女性の暮らしぶりを、知るようになってきているのだ。
その挙句の果てが、家出という異常事態の多発を、生み出しているということだろう。アラブの女性は男性同様に早熟であり、自己主張が強いようだが、それが外国の風習を知るに至って、表面化してきているということであろう。