女性がサービスするカフェが、イラクのバグダッドで開店した。そう聞くとどうしても、日本の秋葉原に登場したメイド・カフェを想像してしまうのだが、どうやらそれとは全く違う性質のもののようだ。
しかし、そうは言っても、男性が炒れるお茶を男性がサービスするのが普通のアラブ世界、しかも宗教色の強まっているイラクのバグダッドでは、大変な勇気が無ければ開店できまい。
昨今では、イラクのアルカーイダがイスラム原理主義を主張し、非イスラム慣習の服装をしている女性は、非難され命さえも狙われる危険性がある。シーア派も同様に、現代的な服装を女性がすることは、厳しく取り締まっている。
つまり、今回バグダッドで女性がサービスするカフェを開店した女性は、まさにジャンヌダルクのような、勇敢な女性であろう。彼女がカフェを開店することを思い立ったのは、4-5年前のことらしいが、周囲の人たちに止められて、今日まで開店を遅らせたということだ。
彼女は女性にも社会的役割がある。職場もしかりだということだ。イラクでは政府の発表によれば、失業率は18パーセントということになっているが、実際には30パーセントを超えている、と彼女は主張している。それが事実であろう。
さてそのカフェだが、普通のビルの一階で開店するのは危険すぎる。そこでホテルの6階に、開店したということだ。そこからはチグリス・ユーフラテス川が一望でき、しかもカフェを訪れる客層も、親子連れやカップルが多いということだ。
当然のことながら、ウエイトレスを冷やかすような類の男性同士の客は、即座に店から出されるということだ。そのルールが機能しているのだから、バグダッドの住民の間にも、この手のカフェのニーズが、あるということであろう。
結果的に、店内は静かで落ち着いて紅茶やコーヒーが楽しめ、会話が成り立つという評判だ。血なまぐさいバグダッドに出来たオアシスということであろうか。その場合心配なのは、イラク人の客もさることながら、アメリカ軍や軍関係者の横暴な振る舞いだ。
アメリカ政府と軍がおろかでなければ、そのような行動は許すまいが、どうもアメリカ政府やアメリカ軍にはコモンセンスというものが、欠落している場合がありそうだ。そんなことになれば、ますますアメリカ軍の駐留は、イラク国民に歓迎されなくなるのだから。この際、自身に対する行動規制も強化して欲しいものだ。