先日、エジプトのムバーラク大統領の健康問題と、後継者の問題について書いたが、パレスチナでも同様のことが、起こり始めているようだ。マハムード・アッバース議長の健康に問題があり、パレスチナ自治政府内部で後継者指名が、取りざたされ始めているというのだ。
マハムード・アッバース議長は75歳に達している。ムバーラク大統領の83歳に比べれば、若いと言えないことも無いが、アラブ人の年齢は日本人の年齢に、プラス10で計算するのがちょうどいいと私は考えている。
そうなると、マハムード・アッバース議長の肉体年齢は、既に85歳に達しているということだ。そう考えれば彼の健康に問題があっても、なんら不思議は無いということになる。彼は以前から心臓病を抱えていたのだ。最近それが顕著になってきていることから、彼の周辺の人たちが後継問題を、あからさまに口にするようになったようだ。
過去数週間は特に健康状態の悪化が目立ち、マハムード・アッバース議長はヨルダンのアンマン市にある、彼のかかりつけの病院に、6回も足を運んだということだ。彼は以前からそこで、健康チェックを受けてきたということだ。
パレスチナ自治政府をコントロールしている、マハムード・アッバース議長の所属するファタハ組織は、いまガザを拠点とするハマース組織と、真っ向から対立している。それだけに、もし万が一マハムード・アッバース議長が突然倒れるようなことでもなれば、パレスチナ内部は大変な混乱状態に、陥る危険性があるということだ。
そこで取りざたされ始めた、マハムード・アッバース議長の後継者だが、その第一に挙げられるのは、アメリカやEUに評判のいい、現在首相職にあるサラーム、・ファイヤード氏だが、彼には解放闘争の闘士としての経験が無い。従って、どうしても他の闘争参加経験者と比べ、迫力に欠けることになる。
そうした理由から、マハムード・アッバース議長の後継者は、パレスチナ中央委員会やパレスチナ革命評議会のメンバーから、選ばれる可能性が高いということになる。
そうなると、最初に名前が挙がってくるのは、治安担当経験者である。西岸の治安担当責任者のジブリ-ル・ラジューブ氏、ガザの治安担当者だったムハンマド・ダハラーン氏ということになる。次いで、イスラエルの獄中にあるマルワーン・バルグーテイ氏、そしてサエブ・エラカートしということになろう。
彼らが語っているとは言わないが、パレスチナ内部にはサラーム・ファイヤード氏が、アメリカやEUの支持を受けていることから「アメリカ人やヨーロッパ人、イスラエル人に、われわれのリーダーを選ばせるわけには行かない。}と言い出している人たちが少なくない。
それは述べるまでも無く、サラーム・ファイヤード氏をマハムード・アッバース議長の後継者にはしたくない、ということを意味している。ちなみに彼は最近、これまで握っていた外交、内務、金融面での権限を、マハムード・アッバース議長の命令で、手放している。